第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
side 治 (現在)
『…っみたいな感じで。伝えるなんて絶対できなかったし、角名くんはきっとみんなに優しいから。ちょっと優しくされたくらいで勘違いとか…恥ずかしいしね。』
「うーん、でも移動の座席は角名が仕組んどるやろ。ちゃんの隣になれるようにしとった一択やんな?」
『私がすぐに寝ちゃうから他の人に迷惑かからないようにしてたんだよきっと…角名くん優しいから。』
何をどうしたら自分の片想いだと思うんや。
角名の方がベタ惚れやん気づいたってや…。
空き教室で向かい合って座りながらちゃんの話を聞く。2人きりでちゃんと話すのは初めて。間近で見ると驚くほどに可愛らしい顔をしとる。
ちゃんが角名んことを好きだったなんて本人が知ったらどないすんねやろ。控えめに言うて発狂はするやろな。やって角名一目惚れちゅうてたし。中一んときからずーっと好きやねんて。せっかく両思いやったんにチキンと部活思いすぎる2人やからくっつかれへんかったんやろな。
「今は?」
『…っえ?』
「今は角名のことどう思うてんの?」
『いま、は…相変わらず優しくて素敵な選手だと思ってる。』
「彼氏のこと好きなん?」
『…そ、うだね。』
返事に詰まる彼女はなんだか苦しそうで、角名への気持ちがゼロって訳じゃないと思うねん。ただなにかに怯えとる。角名から聞いただけやけどクソみたいな男やと思った。自分の彼女との情事を他の男に聞かせるなんてありえへん。
「もし何か抱えとるんなら俺たちはいつだってちゃんを助けたる。せやけどそれはちゃんから 助けて って言われたらや。」
『……っ』
「角名に言いづらいんやったら俺に言うてくれたらええ。ツムもギンやって絶対味方やからな。」
また俺たちを思って何も言えなくなるなんて角名も俺らも望んでへん。俺に相談したんも何かのSOSかもしれへん。そやったら気づいてあげなあかん。
現に角名はちゃんのことが好きやし。協力するって約束した。彼女の気持ちが少しでも角名に傾いとるなら、角名とおることで心から笑うてくれるなら、それが最善やから。だから何か抱えとるんなら話してほしいって本気で思っとる。