第14章 初恋の君と (角名倫太郎)
合宿も遠征も移動するバスで隣の席は決まって角名くんだった。学年ごとに座れば自由席だったし、わりとみんな行きと帰りでバラバラの席に座ってた気がする。だけど私の隣は3年間ずっと角名くんだった。
「ちゃん窓側どーぞ?」
なんて毎回声をかけてくれるから自然と隣の席になる。角名くんたちの方が疲れているのに先に寝落ちてしまうのはいつも私だった気がする。肩を借りて寝てしまった事も多々。それでも到着するまでは起こさずにいてくれるから毎度ぐっすり寝てしまっていた。
「ちゃん学校ついたよ」
『…ん、』
「ふはっ、おはよ」
『おはよ…。ごめんまた角名くんにもたれてた…』
まだ開かない目を擦りながら謝ると彼は決まって頭を撫でてくれた。俺にもたれてたから髪の毛乱れちゃったねって笑いながら直してくれる角名くんにまたきゅんとして、この気持ちを隠さなきゃって思えば思うほど意識しちゃってた。
「もたれて寝るのは大歓迎なんだけどさ、呼び方戻ってるよ?」
『ぇあ…っり、倫太郎くん…っ』
「うん、なあに?」
『いつももたれて寝ちゃってごめんね』
「なんでよいいよそのくらい。俺たちのためにずっと動いてくれてたんだから肩くらいいつでも借りてよ。」
『倫太郎くんは優しいね』
「大切なマネージャーですから」
そう、私はマネージャーで角名くんはプレイヤー。その立ち位置が変わることは無いしその距離感が縮まることもない。真剣に頑張ってる角名くんにこの気持ちがバレちゃいけない。