第3章 初恋 (佐野万次郎)
「ちょ…っと?」
『ん、真ちゃんと違う匂い…』
「え?」
俺が覆いかぶさってるというのに、俺の下でヘラヘラと笑いながらシャツに鼻を擦り寄せて来る。真一郎と違う匂い?同じ家なのに匂い違うのかな。あ、でもすげえいい匂いするし柔軟剤一緒でもちょっと違うのかも。
…っ?
タ、タ、タ、
ドアの向こうの廊下から聞こえる足音。
真一郎がのこと探しに来たのか。
「ー?部屋か?」
やばい…離れなきゃ。
コンコン…「?いる?」…ガチャ
「あれ、万次郎なにしてんの?
って…ー?顔赤いよ?
え、酒飲んだ?」
『んー、少しだけー』
名残惜しかったけど体を離して真一郎が入ってくるのを静かに待った。この様子的に多分気づいてないかな。
「リビングで眠たそうにしてたから俺が運んだ」
「そっか、ありがとう万次郎」
「じゃ、俺部屋戻るね」
「うん、おやすみ万次郎」
「ん、真一郎おやすみ。
もおやすみ」
『万次郎くんおやすみい』
パタンとの部屋を出て向かいにある自分の部屋に戻る。あのまま真一郎が来なきゃよかったなんて思った自分が怖い。ベッドにダイブして眠くないけど瞼を閉じた。早く寝てしまいたかった。
-----------------------------
「…お酒飲んだの?
飲むと甘えん坊になるから俺がいる時だけにしてっていったよね?1人で飲んでたの?それとも万次郎も一緒?」
向かいの部屋から聞こえてくる会話。
たしかに酔ってあんなになるなら心配だよな
他の男がいるところで絶対飲ませたくない。
『ひとりでのんだよお。真ちゃんの事ね、待ってたら眠たくなっちゃってね、万次郎くんに運んでもらったの。』
「そお。待っててくれてありがとう。
待たせてごめんね、続きシようか…?」
『ん、しゅる…う。』
「んは、が酒飲むなんて珍し。
今日は甘えん坊のちゃんかあ」
『ん…真ちゃん…はやく…っ』
「やば…俺とする時いつも酔っててよ♡」
…嫌なのに聞き耳をたててる自分が憎い。
素直に反応する体を恨んだ。
好きな女が兄貴に抱かれる声なんて
聞きたくないのに…。