第13章 お気に入り(松野千冬)
「おいはっかーい!何かあったのかー?」
八戒くんの友達が来てるんだっけ。
だけどこの声も私は知ってる気がする…
ゆっくりと上がってきた足音の人物が八戒くんの背後から顔を覗かせた。
「え、さん?」
『ち、ふゆくん…』
「は、黒龍の総長…?なにこれ…どういう状況すか。」
「ほお、お前か。に想いを寄せてんのは。」
『ちょっと大寿くん!?』
「お前さんから離れろよ!」
な、な、なんで分かったの!?
気づいても普通本人に言わないよね!?
「お前からは敵意を感じる。」
そう言って私の腰を抱き寄せた。
『大寿くん…?』
「さんに触んじゃねえ!」
「ち、千冬…やめとけって…!」
「っるせえ!」
「兄貴怒らせると死ぬぞまじで…っ」
黒龍総長…
柴大寿って八戒くんのお兄ちゃんだったんだ。
顔似てないし気づかなかったや。
「さんコイツのこと好きなんすか?」
『…っえ?』
「俺待ってるんだけど…この人が好きなの?」
『まって千冬くんこれは…っ』
「くく…っ、お前ちゃんと愛されてんじゃねえか」
持っていけ、と私を千冬くんに差し出す大寿くん。
「…?よく分かんねえけどでけぇ声出してすんませんした。さん行こう。八戒すまん!またな!」
「え、え、なんなの!?」
千冬くんに手を引かれるまま靴を履いてメットを被らされあっという間に自分の家に帰ってきた。
『私の…家?』
「今からお邪魔してもいいっすか?」
『あ、うん』
部屋に着くなり私を抱きしめて肩に頭を預ける彼。背中に回った手は微かに震えていて、なんだか今にも泣き出しそうだ。
『千冬くん?』
「さん…あいつのもんじゃないよね…?」
『あいつって大寿くん?』
「黒龍総長のもんでも俺…奪いに行っちゃうかも。」
『ちょっと待って大寿くんとは何もないよ?』
「でも2人で…家でなにしてたんすか…っ」
もしかして何か勘違いしてる?