第13章 お気に入り(松野千冬)
「んじゃ俺帰るから千冬のこと頼むわ」
「うす!任せてください!」
こうやって俺にさんを送らせてくれるのも場地さんの優しさ。おかげで3人の時は俺が送るのが恒例になってきた。解散際になるとさんは俺の近くにいるし、彼女の中でもきっと少しずつそれがあたりまえになってきてる。
「メット被ってくださいね」
『...被んなきゃだめ?』
メットを手渡すと両手で受け取ってから俺を見上げて言う。上目遣いの破壊力...!!
「...っう、」
「千冬ぅ負けんな」
「う、うす。被んなきゃダメっすよ!」
『ちぇー。はあい。』
今回もメットを被らせることに成功。
『圭介まったね〜』
「おーまたな」
「失礼します!」
腰に回る華奢な腕。時折イタズラに太ももに触れるけど、毎回ドキドキしてしまうのは俺だけでクスクスと小さく笑う彼女の振動が背中から伝わってくる。
『送ってくれてありがと千冬くん』
「いえ、いつでも任せてください」
家に着くといつも俺を抱きしめて頭を撫でてくれる。この時間が好きだけどまだ一緒にいたい葛藤もある。
「あ、あの...」
『うん?』
「お茶...っ、飲みきれてますか...!」
『あ、結構残ってると思う。昨日春全然飲んでくれなくてさぁ。千冬くん飲んでくれるの?』
「もちろんす」
『じゃXJ置いておいで』
あぁ昨日は三途が来てたんだよなと若干落ち込みつつ単車を停めて、エントランスをくぐり、エレベーターに乗り込む。何度来ても緊張する。
『荷物適当に置いてね。私お風呂行ってくる。ラーメン屋さんの匂いがすごくて笑』
「うす!」
確かに髪からラーメンの匂いする...俺も後で借りようかな。
―――
『お待たせ!千冬くんも入る?』
「あ、じゃあお言葉に甘えて」
『いってらっしゃーい!スウェットとか入ってる場所分かるよね?』
「分かります!」
さんの家のどこに何があるのか、少しずつ覚えてきた。このお風呂に入るのだってもう慣れたもんだ。でも、風呂上がりのさんにはいつまで経っても慣れない。あんな綺麗な脚出されたらこっちは気が気じゃねえんだよ...。