第13章 お気に入り(松野千冬)
「ん、いい匂いしてきた」
『はいお待たせ、どーぞ』
「いただきます」
前に春が美味しいと言ってくれたミートソースのパスタ。トマト缶とひき肉が余ってたからちょうど良かった。
「うま」
『良かった』
「お前料理うまいよな」
『こったもの作れないよ』
「十分だろ」
『食べたら私もお風呂行ってくるね』
「ん、洗い物しとくわ」
食べ終わってすぐお言葉に甘えてお風呂に向かうとタオルといつも着てるスウェットが準備されていた。いつのまに…。
あれ、シャンプーも詰め変わってる。
さすが春…。
―――――
『ただいまぁ』
「あったかいもん飲む?」
『飲む』
「白湯?」
『うん。あ、冷蔵庫にあれ入ってるからいれて』
「あれ…?あー、おっけえです」
コトン、とテーブルに置かれた白湯の中には梅干しが1粒。そうそうこれこれ。梅干し白湯は体が温まるし次の日の朝は顔がスッキリしてる気がして好き。
『よく “あれ” で分かったね』
「前に飲んでたよなあと思っただけ」
『さーっすが春!しかも種取ってくれてる優しい!それに着替えもシャンプーの詰め替えもありがとう。』
「飯食わしてもらったんでね」
『もううち住む?♡』
「住むか馬鹿」
『ちぇー』
「ちぇーってよ。松野がいんだろお前には」
『なんで千冬くんがでてくるのよ』
やすも春もどうして彼の名前を出すのだろう。そういえば圭介もやたらと千冬くん連れてくるようになったし。
「最近一緒にいること多くねえ?」
『んーまあ圭介んとこの副隊長だしね。ほら私元々圭介と一緒にいること多いじゃない?』
「にしてもじゃねえ?
んでお前は気づいてんだろ」
『なにが?』
「どう考えても松野はお前にお熱ってな」
『あー…、まあこの完璧美少女に惚れない男はいないってことよ』
「可哀想になぁ松野。口悪喧嘩早女に騙されてるわ。」
『おい言い方ってもんがあんだろ!』
「そういうとこでえす」
ムッキー!!あんただってね!顔に騙されてる女の子が可哀想だわ!無口なのに笑顔が素敵とか言われちゃって!腹の中で何考えてんだか分かりゃしない!忠犬ていうか狂犬なのよ!