第3章 初恋 (佐野万次郎)
『あと…あ、グラス出さなきゃ』
「俺も手伝うよ」
『あ、万次郎くんありがとうね
見てよ真ちゃんてば圭介くんと話してばっか』
「はは、久しぶりに会うから嬉しんだよきっと」
『それもそうか!だけどさ私思うの!
万次郎くんの彼女さんになる子はきっと幸せだね!』
「…え?どうして?」
なに…期待するじゃん…
『だってさ、買い物ついてきてくれたり、荷物もってくれたり、今だって私が1人でグラス持ちきれないなって気づいて手伝いにきてくれたんでしょ?優しいね万次郎くんは。彼女出来たらちょっと寂しいけど…ちゃんと紹介してねー?』
…そんなん…っ
「そんなん誰にでもやんねーよ…」
『ん?』
「あーいや、早く運ぼ?もう俺腹ぺこ!」
『だね、私もお腹すいたぁ!』
聞こえてなくてよかった。
買い物着いてくのも荷物もつのも手伝うのも、全部全部だからなんだけどな。少しでも良い奴って思われたい。少しでも意識してほしい。俺が優しくするのなんて…が好きだから…下心なんだよ。彼女出来たら寂しいとか言うなよ…期待すんだろ。
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「うーもう食えない!腹いっぱい!」
『あー真ちゃん残念。
あの屋台のたい焼き買ってきたのに〜』
「え!まじ!それは食える!!」
『ふふ、待ってね持ってくるから
賢くんたちのもあるから食べてね!』
ふー、みんなが食べてる間に洗い物でもするか
たい焼きをテーブルに運んでお皿を回収する。
昨日はエマが洗い物してくれたし!
今日は私の番!よし!洗うぞー!
お皿を数枚洗ったところで袖が落ちてきた…
濡れた手で袖をまくろうとした時に後ろからふわりと包まれて袖がくるくると巻かれていく。振り返ればニッコリ微笑む彼。
『万次郎くんっ』
「袖濡れちゃうよ?俺も洗うの手伝う!」
普段はやんちゃで傷つくって帰ってくることも多いけど、家にいるときは普通の男の子。優しくて気遣いができて…きっと学校でモテモテだな。昔から弟みたいに可愛がってきた万次郎くん。最近は背も抜かれて体もがっしりしてきて、成長してく彼を見てると嬉しさ半分なんだか少し寂しくもなる。