第13章 お気に入り(松野千冬)
集会中もさんは俺を気にかけてくれてるようで、目が合うと手を振ってくれたり駆け寄ってきてくれたりした。
「〜帰んぞ」
『あーい』
「千冬お前帰んねーの?」
「か、帰るっす!」
またぼーっとしていた俺は場地さんから声をかけられて我に返った。並んで立つ二人を見てしみじみ思う。さんと場地さんお似合いだな。これぞ美男美女って感じ。
「メット被れって」
早々に場地さんのゴキへと跨り足をプラプラとさせ、早くと急かすさんに場地さんがメットを渡す。
『圭介だっていつもしてないじゃん』
「お前は被んだよ危ねぇだろーが」
『えー髪ボサボサになる』
さらっと心配するとことかなにもかもがスマートだな場地さんは。
「怪我するよか良いだろ。てか今更そんなこと気にすんじゃねえ」
『わーかったよ。被りますぅ』
渋々メットを受け取って被るさん。
『やっぱり窮屈やだ取っていい?』
「良いわけねえだろ黙って被れ」
『過保護けーすけ。』
「あ?」
『なんでもない』
そもそも俺らはいつもメット被ってねえから必要ねえのに。さんのために買ったんかな。わざわざ?
そういやマイキーくんもドラケンくんも使わねえのにさん乗せるときは持ってるよな。三ツ谷くんだってそうだ。
「うし、帰んぞ」
『あーい』
「おいそんな掴まんなよ」
『けちー』
「…もう好きにしてくれ」
場地さんの背中にぴったりとくっつくさん。その光景にザワザワとして胸が痛む。
『圭介ぇ』
「んー」
『眠たくなってきたあ』
「はあ!?おま、危ねぇから寝んな!絶対寝んなよ!?おい千冬!悪ぃけどこいつ落ちねえか見ててくれ!」
「う、うすっ」
ウトウトと瞼の落ちていく彼女。
「?おい!落ちる落ちる馬鹿野郎!ったくお前はマイキーじゃねんだからしっかりしろって!」
お腹に回されている彼女の腕を場地さんが掴んで支えている。
「おら着いたぞ」
『…おはよぉ』
「お前まじで危ねぇって」
『でもちゃんと帰ってこれたじゃん』
「だからそれは俺が『圭介のこと信用してなかったら寝たりしないってばぁ〜』
「お前なあ…はぁ…。」