第13章 お気に入り(松野千冬)
次の週の集会。彼女はまた何事も無かったかのようにマイキーくんたちと一緒にいた。俺はそれをただ眺めていた。
「千冬〜?」
「おー八戒。なに?」
「いや、ぼーっとしてっからさ」
「あぁ、ごめん」
「体調悪ぃの?」
「まあ…ある意味?」
「大丈夫か?」
少女漫画ではこういうの〝恋煩い〟つってた。だとしたら俺は今煩ってる
『千冬くん!八戒くん!』
「あ、さ、「ちゃーん!」
俺が彼女の名前を呼ぶよりも先に八戒が走ってきた彼女を受け止めた。
「っと、びっくりした!」
『八戒くんなら受け止めてくれると思った〜っ』
八戒の腕の中で無邪気に笑うさんは俺の好きな人だけど彼女じゃない。好きだと伝えることすらできてない。
「ちゃん軽いし余裕だよー!」
『やだ〜ありがと〜♡』
「お、俺だってさんくらい余裕で受け止められますよ!!」
『ほんとー?後輩が頼もしくて安心♡』
早く八戒から離れて。そんな笑顔他の男に見せないで。
あんなことをしても恋人じゃないなんて。
やっぱり辛くて。苦しいけど大好きで。
場地さんだって三ツ谷くんだって俺なんかよりずっとかっけえし強ぇし。マイキーくんもドラケンくんも…考え出したら止まんねえしそんなこと言ったら八戒だってツラ良いしタッパもある。
『千冬くんどうしたの?何か悩み事?』
いつのまに八戒と離れたのだろう。悲しい顔しないでって俺の頬を両手で包むさん。
『悩み事があるなら先輩がきいてあげよっか』
「…さん俺…っ」
「おいー!」
『なに圭介ー!今千冬くんと話してんだけど!』
遠くから聞こえた場地さんの声に反応をしたけど、彼女の手は俺の頬に触れたまま。
「母ちゃんが飯食いに来るかってえ!電話!」
『え、行く!!京子さん会いたい!』
「おっけー!」
会話的に場地さんの親とも仲良いみたいだし、創立メンバーの中でも特に場地さんと話してることが多い気がする。
『ごめんね千冬くん、お話しよっか』
「いや、やっぱりなんでもねえっす…」
『私じゃ頼りない?圭介の方がいいかな?』
「いや、そういうんじゃ…っ」
さんを心配させちまってる。本当は今すぐ好きだって言いたい。でも今のままじゃ…