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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第13章 お気に入り(松野千冬)


『スウェットのサイズ平気そうだね。』

「色々借りちゃってすみません…」

『全然だよ、誰もいないし気にせずゆっくりしてってね。』

お風呂も借りて、スウェットまで借りておいて…でも1つ気になることがあった。

「…このスウェットって…男物っすよね?」

さんが着るにはあまりにも大きい。じゃあ誰のだ…?彼氏?はいなそうだし…元彼?

『誰か泊まりに来たとき用に買ったやつ。ほら、エマが来たりするからさ。万次郎が来たこともあったし一応何着かね。』

「あぁなるほど…なんだそっか…。」

『なーに千冬くん、男物だから気になっちゃった?』

「…はぃ。」

『一緒にいたら分かると思うけど彼氏なんていないし、元彼がいたとしてそいつの服いつまでも置いとかないから。』

別に俺を安心させるための説明じゃない。俺が気にしたから答えてくれただけであって、…分かってる。さんは俺の事をなんとも思ってないから。

『あ、そだ。あと10分経ったらここの火消しておいて!私お風呂入ってきちゃう!』

「あ、うす!了解っす!」

バタバタとお風呂へ向かう彼女。 言われた通り10分後に火を消してから数分、まだ髪の濡れたさんがお風呂から戻ってきた。

『ごめんお待たせ!火ありがと〜』

「ぃや全然…す、!」

スウェット生地の短いパンツにトレーナーを着て戻ってきた彼女。火照った肌とか、いつもは隠れている脚とか…そういうのいろいろ…やばい。

『いい匂いだぁ〜、よし食べよっか』

「あ、俺飲み物とか出しますっ」

『ありがと。冷蔵庫開けて右側ね。手前から麦茶とジャスミン茶。コップは隣の棚から好きなのとってね。』

「すげ、ちゃんと作ってるんすね」

『私1人しかいないからたまに余らせちゃうの。だから飲みに来てね笑』

「いつでも呼んでください」

さんの作ってくれたハンバーグがまじで美味くて完全に胃袋まで掴まれた。

「俺ハンバーグって焼き派だったんすけど、今日から煮込み派になったっす」

『うれし〜ご褒美にちゅーしてあげよっか?』

「…っえ?」

『ご褒美いる?』

「ほ、ほしぃ…です」

『いーよ、ご飯食べたらね?』

いたずらに笑う彼女。早まる鼓動。正直そこから飯の味なんて分かんなくて気づけばさんの部屋のベッドに腰かけていた。
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