第13章 お気に入り(松野千冬)
『緊張してる?』
「ぃえ…はい。」
『今日は千冬くんからしてみる?』
隣に腰かけた彼女が俺の頬に手を添えて覗き込むようにして優しく問いかける。
「い、いいんですか、?」
『千冬くんにできるかなぁ』
「で、できます…っ」
俺も彼女の頬に手を添えてゆっくりと近づく。でも俺が触れるよりも先に彼女の唇が俺の唇を奪った。
『遅いんだもん。我慢できなかった』
「…も、もっかいいいですか?」
『いーよ』
どーぞ、と目を閉じた彼女の頬にもう一度手を添えてゆっくりと柔らかな唇に触れる。
『千冬くん顔真っ赤だよ』
「緊張しちゃって…心臓やばいっす」
『もっとドキドキしてみる?』
「もっと…?」
『少しだけ口開けててね』
さんの唇が俺の唇を食べるみたいに優しく何度も口付ける。
『舌出して』
言われるがままに従って舌先を出すと彼女の舌にぬるりと絡め取られて呼吸の仕方さえ分からなくなる。
「っんは、あ…ッ」
『声漏れてるよ、きもちぃ?』
「ん、変な…感じ…っ」
『もっとする?』
「し、たい…です、」
頭の中がさんでいっぱいで溶けそう。気持ちい。熱い。離れたくない。
俺だって男なわけで身体は正直に反応してしまう。勃ちあがったソレはスウェットを持ち上げてきっとテントを張っている。バレたら絶対引かれる…。
『おっきくなっちゃったね?』
あ、終わったかも…
「…ご、ごめんなさい…っ」
『こういうときはいつもどーしてるの?』
こういうときって…え、そりゃあ…
「ひ、とりで…シてます…」
『女の子とは?』
「ぃや…キスもさんが初めてだし…女の子とそういうの全くゼロっす…」
『そっか。1人でするときはどうしてるの?』
淡々と質問を繰り返しながら俺の首筋や耳にキスを落とすさん。こんなの反応しないわけない。
「さ、最近は…」
『うん』
「さんのこと考えながらシてます…」
『今目の前に本物の私がいるけど』
「ぇ、え?」
『千冬くんが1人で気持ちよくなってるとこ見たいなぁ』
それってつまり今ここで…自慰行為をしろってこと…だよな。人前でなんて嫌なはずなのに興奮状態の思考回路といたずらに微笑むさんを目の前にして正常な判断なんてできるわけがなかった。