第13章 お気に入り(松野千冬)
集会が終わり、場地さんの背中に飛び乗って楽しそうに笑うさん。
「軽。お前飯食ってるか?てか降りろ!」
『えーっ昔はこうやってよく騎馬戦したじゃん!あと食べてますう!万次郎〜騎馬戦しよ!賢の背中乗ってよ!』
「お、いいぜ!ケンちんおんぶ!」
「おい、騎馬がドラケンはずりぃだろ!」
さっきまで降りろと言っていたのに勝負事になると負けず嫌いな場地さん。その背中ではしゃぐさんは今日も綺麗で可愛くて視線を奪われる。
マイキーくんがさんに掴みかかると、グラりと揺れて彼女の体勢が崩れる。
「さんっ」
「っぶね、」
『お、圭介ないすきゃっち!』
「ないすじゃねえよ危ねぇな。ガキの頃とは訳が違ぇんだからもうマイキーには勝てねえっての。」
『ちぇーっ』
「いえーいケンちん!勝った!」
「わりぃ大丈夫か?ほらマイキーも謝れ。怪我するとこだったんだぞ」
『いや、いいってそんなん!万次郎に勝てないのは分かってたし〜!懐かしくてやりたくなっただけ!』
咄嗟に手を伸ばした俺よりも先にさんを受け止めたのは場地さんだった。落ちたことに焦る様子はなく、まるで場地さんが受け止めてくれると分かっていたみたいだった。
悔しいけど、やっぱりこの人達に俺は何一つ勝てない。喧嘩も信頼も何もかも…。
『あ、千冬くん!』
「はいっ」
『受け止めようとしてくれてありがとね!』
「あ、いやでも場地さんがいたんで俺は意味なかったすけど…」
『でも助けようとしてくれたじゃん?』
ありがとう、と俺を抱きしめて頭を撫でてくれる。さっきまでのモヤモヤとか全部さんの一言で、行動で、無かったみたいにどこかへ飛んでく。
「あ、あの…さん」
『うん?』
もう帰ろうぜ、と単車に跨り始める場地さん。それに続くように皆がゾロゾロ単車へと足を進める。
「俺…っその、送っていきます…!」
『方向逆じゃない?』
「だめっすか…?」
『ううん、助かる』
「あ、じゃあ俺のケツ乗ってってください!」
いつもはマイキーくんかドラケンくんの後ろに乗ってる彼女。今日こそはって勇気出してみた。