第13章 お気に入り(松野千冬)
『千冬くんてさ、圭介のどこに惚れたの?』
「惚れ、え、?」
カフェにて向かいあわせで座るさんからの唐突な質問に意図が汲み取れず頭が混乱する。
『あー…、なんで圭介の下につこうと思ったの?』
「あぁそういう…。あの人は…場地さんはすげぇ人っす。今まで出会ったどんな人よりもかっええ。」
『例えば?』
「うーん俺は ずっと1人だったんすよ。人を嫌って、人を傷つけてきた。でも場地さんと出会って変わりました。仲間のために命張れるあの人について行こうって決めたんです。」
『それ圭介に言ってあげなよ。』
「こんなん言われても迷惑じゃないっすかね」
『照れ隠しでぶん殴られるかもね』
「それあるっすね笑」
2人きりの時はやっぱりどこかクールで掴みどころのない人だ。みんなといる時の無邪気さとかそういうのは、ない。でも俺はどっちのさんも好き。
彼女が飲んでるのはミルクティ。甘いもんが好きなのかな。
『千冬くんのそれ1口ちょうだい』
「いいっすけど俺口つけちゃってますよ」
『別に気にしないけど』
「あ、それなら全然…っ俺も、別に」
気にする!俺も、じゃない!!
好きな人と関節キスは全然気にする!
俺の飲みかけのアイスティー。さっきまで俺が口をつけていたストローは今彼女が口をつけている。ドクドクと鳴る鼓動。こんなんで慌ててどうすんだよ!さんは1ミリも気にしてないぞ。
『ありがと。私のも飲む?』
そう言って差し出されたミルクティ。
「い、いいんすか、っ」
『いいでしょ。私だって貰ったし』
「えぁ、じゃあ…いただき、ます…っ」
そっとストローに口をつける俺をじーっと見つめる彼女。
『…千冬くんてさ』
「は、はい」
『私のこと好きでしょ』
「え、っけほ、けほ…っえ!?」
なんでバレてんの!?誰にも言ってねえのに!そんなバレバレな態度とってたか?いや、そんなことねえよな…?
『違った?』
「いや違わ…違…ちがく…んん…ッ」
違うとは言えずに口ごもる俺を見てケラケラと笑うさん。
『ごめん、可愛くてつい意地悪しちゃった笑 あ、そうだ千冬くん。』
「な、なんですか…っ」
今度はなに…っ!?
心臓バクバクなんだけど!!