第13章 お気に入り(松野千冬)
さんは三ツ谷くんと同じ学校だということを知った。
抗争で俺の特服が破けたのに気づいたさんが三ツ谷に直してもらえば?と放課後に俺を呼び出した。
こっちの中学にくるのは初めてだ。
校門まで迎えに来てくれたさんと手芸部とかかれた教室へ入る。
「よぉ千冬!わざわざ来てもらってごめんな」
「いや、俺の特服ですし…それに三ツ谷くんに直して貰えるとか思ってなかったんで」
「が直してやれっていうからさ。俺じゃ気づかなかったし礼ならコイツに言いな」
『私が気づいたところで直せないから三ツ谷に頼んだんでしょーがっ』
「ははっ、まあ俺これ直しとくから帰りなよ。すぐは終わんねえから。」
「え、でも俺のだしそんな」
『三ツ谷がいーって言ってんだから行こ?喉乾いた!』
「こいつの遠慮のなさハンパないだろ?笑 でもまあほんと気にせず帰っていいから!」
「そしたらじゃあ…お願いします!」
「おー、またな!」
手を振る三ツ谷くんを背に俺はさんと教室をでた。
「まじでいいんすかね…帰っちゃっても。」
『三ツ谷がいいって言うんだからいいんだよ。それにあそこにいたって何も出来ないもん。』
「まあそうだけど…」
『じゃあ…私がカフェ行きたいから付き合って?それならいいでしょ?』
この人は優しい。あのまま三ツ谷くんのそばにいたって俺は何もできないし、三ツ谷くんの邪魔になってたかもしれない。彼女に誘われてあの場から離れたことにして俺の心を軽くしてくれてる。
端的に言えば私のせいにしていいよってことなんだと思う。でもそれを気づかせないような人。気を遣わせない人。
どんどん好きになる。
この人にハマっていくのが分かる。
この人は俺なんてちっとも気にしていないのに。
俺はもっとふわふわした女の子みたいな人を好きになるのだと思っていた。でも今俺の心を埋め尽くすのはクールビューティを体現したような人。