第13章 お気に入り(松野千冬)
『三ツ谷ありがと。直った直った!』
「お前俺たち以外の前でそれすんなよ?」
『わーかってるって!三ツ谷たちの前だけだってば!』
「はあ…ごめんな千冬、慣れてくれ」
申し訳なさそうに言う三ツ谷くんとは裏腹にサラシが直って動きやすいのか、はしゃぐさん。
『あ、ねえ八戒くん背のびた??』
「あ、うん…少し」
『だよね!おんぶして!』
「え?」
『とりゃっ!』
「うわっ、え、ちょっと…!?」
『おー凄い!たかーい!』
女嫌いの八戒にも変わらぬ態度で接する彼女は戸惑う八戒を無視して今まさに背中に乗っている。
こればっかりは落とすわけにいかないのかしっかりと彼女を支えてフリーズ中。
「おい八戒にちょっかいかけんなって!」
『もー三ツ谷うるさい!ねえ八戒くん?』
「あ、えとタカちゃん俺…っ」
「降りろってバカ!八戒困ってるだろ!」
『やだ八戒くんがいい!八戒くんがいいー!』
「もうだめだ…八戒すまん相手してやってくれ」
「え、ちょっとタカちゃん…っ!」
あっちに行きたい、向こうに行きたい、階段の上がいい、八戒におぶられたまま境内を移動する彼女。しばらく経って戻ってきた頃には八戒の表情も和らいでいて打ち解けたみたいだった。
「そうだちゃん今度俺ん家おいでよ」
『え、いくいく!』
「何がどうなったらこの短時間で八戒ん家行く流れになんだよ。」
ため息をつく三ツ谷くんとは裏腹に楽しそうな八戒とさん。
『ルナマナちゃんにも久々会いたい!』
「じゃあタカちゃんたちもおいでよ!」
「んおー、アイツら喜ぶわ。」
こうやって誰とでも仲良くなるんだなこの人は。彼女の周りにいる人はもれなく皆楽しそうだ。