第13章 お気に入り(松野千冬)
「いつまで千冬の手握ってんの?」
『可愛くてつい。…った!なんで叩くの!』
「千冬が困ってんだろーが」
『…ばか三ツ谷。』
この人いま三ツ谷くんのことばかって…言った?
「聞こえてんぞー」
『っげ、』
「げ、じゃねえ!集会もロクに来ねえしよ」
『だーって見たいテレビの時間と丸かぶりなんだもん!曜日変えてよ!』
「んな理由でサボる幹部がどこにいんだよ!録画してこい録画を!」
『リアタイにこそ意味があるんでしょうが!ばか三ツ谷!』
「なんだとこの野郎!」
『うわーん!三ツ谷が怖いよぅ!助けて千冬くん!』
「いや、ちょ、俺さすがに三ツ谷くんには勝てねえっすよ!?」
今度は俺の後ろに隠れて抱きつくように三ツ谷くんから逃げる彼女。心臓の音が大きくなるのが自分で分かる。
そうだ…だって俺はあの日…この人に一目惚れしたんだから。
どこが好きとか…分かんねえけど。この人の全部が俺を惹きつけて離さない。
あの日会った彼女と雰囲気は違くても。それでも俺はこの人が好きなんだと早まる鼓動が言う。
「千冬から離れろって!」
『嫌だ!守って千冬くん?』
「…っう、うす!」
「おい騙されんな千冬!そいつ顔だけだぞ」
『なんだとコラ!来いよ三ツ谷ぁ!』
「ほら見ろすっげえ口悪いだろ」
どんな彼女も全てがギャップだなあ、としか思えない俺はきっともう沼にハマってる。
『あ待って、サラシ緩んできた。三ツ谷直して』
「はあ…お前のそれどうにかなんねえの?」
プチプチと特服のボタンを外して三ツ谷くんに近づいていくと白い肌が現れた。慣れているのか誰も何も言わないし、ただ八戒だけが背中を向けている。
「うわお前肌白!きれーっ!」
「そう?万次郎も白いじゃん」
「でもお前みたいになんかツルツルはしてねえ!」
そう言って彼女の素肌に触れるマイキーくん。ほんと慣れてんだろうな。