第13章 お気に入り(松野千冬)
「千冬ぅ〜ペヤング食いたくね?」
「食いたいっす!」
「うし、集会の前に買いに行こうぜ!」
「っすね!行きましょ!」
あれからすぐ俺は場地さんと出会ってだいぶ丸くなった。今までみたいに無闇矢鱈と喧嘩をしなくなったし、初めてできた仲間が嬉しかった。
それでも彼女にもう一度会いたくて、あの日貰ったハンカチは毎日持ち歩いていた。会えたら返そうくらいのテンションだけど。
武蔵神社近くのコンビニ。俺たちが入ると同時に女の人が1人でてきた。
「あ…え、」
この人…絶対そうだ。忘れるわけが無い。
「あれお前何してんの」
『お、圭介!万次郎に呼ばれた!』
「ふーん、ま後でな」
『あーいっ』
それだけの短い会話をして彼女は武蔵神社へと歩いていった。あの日とは随分と雰囲気が違う。こんな明るかったか…?
「場地さん今の人って…」
「あぁ?お前会うの初めてだっけ」
「いや、まあ…そっすね」
「アイツも東卍の創立メンバーだ。まあ滅多に来ねえから幻の紅一点とか言われてっけど、普通にそこらへん歩いてるぜ笑」
「へえ…すげえ綺麗な人っすね」
「あーまあそうかもな?アイツの両親元々モデル?だったらしいし洒落てるよな。たしかにタメには見えねえわ。」
「さん…」
「そ、。すげえ良い奴だよ。いっつもゲラゲラ笑っててよ、周りも明るくする奴。」
「そーなんすね、」
知ってる。彼女が多分いい人だって。ボロボロで血が出てる男にハンカチと水をくれた人だ。今思えば血出してる男なんて見慣れてただけかもしんねえけど。
でもゲラなのは…想像つかねえな。
「あ、あの人は特服着ねえんすか?」
「いや?来る時はいつも着てっからこれから着んじゃねえのかな。」
「女の人も同じデザインなんすか?」
「三ツ谷に聞かねえと分かんねえけど見た感じ同じだったんじゃねえかな。あとで確認してみろよ。」
場地さんの言った通り、マイキーくんの隣に座る彼女は俺たちとおなじ真っ黒な特服を身にまとっていた。同じなはずなのにすごく絵になる人だ。