第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
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数秒の沈黙を破るようになる着信音。
携帯に表示された名前は赤葦くん。良くはないタイミングに思わずピクリと反応してしまう。
「出ていいよ」
無視するわけにもいかず、通話ボタンを押せば聞こえてくる赤葦くんの声。部活終わりに皆でラーメンを食べに行くらしい。
《木兎さんたちとラーメン食べに行くんですけど。到着するまで繋いでていいですか。》
『大丈夫だけど木兎くんたちは?』
《いますよ。でも前の方にいるんで》
少し離れたところから聞こえてくる木兎くんの声
『あ、ほんとだ木兎くんの声聞こえ、…っ』
《さん?》
『ごめ…んね、なんでもない…っ』
私の肩に預けられた鉄朗の頭と腰に回された腕。驚いた私に気づいた赤葦くんが私の名前を呼んだ。
《さん今どこいるんですか?》
『今…お、お家ですっ』
嘘を…ついてしまった。
鉄朗のお部屋だなんて言えなかった。
《そっか。もう外暗いから出ちゃダメですよ。先輩可愛いから心配です。》
『ありがと。赤葦くんも気をつけて帰るんだよ。』
心配をしてくれる彼が優しくて胸が痛い。
《あー!あかーし電話!?だれだれ!??俺も話したい!ー!》
ため息をつく赤葦くんの隣で大きな声を出す木兎くん。なんだか心が少し軽くなるような気持ちになる。太陽みたいだな…木兎くんは。
目的地に着いた彼と通話を終えても鉄朗は私から離れず大きな身体を寄せたまま動かない。
『てつ…ろ?』
「赤葦に嘘ついちゃったね」
『…っ』
最低なことをした…分かってる。赤葦くんが鉄朗の存在を1番気にしていたことなんて分かっていたのに…部屋で2人きりなんてなっちゃいけなかったんだ。今頃気づいたって遅いのに…目頭が熱くなっていく。でも泣いていいのは私じゃない。
『あの…これってどういう…』
「前に俺が好きなやついるって言ったの覚えてる?」
覚えてる。
知りたくないと思ったからよく覚えてる。
「分かったら教えてって言ったろ?」
『う、ん。』
「さすがに気づいてほしいんだけど」
『え…?』
これは…これはそういうことなの…?
でも今までそんな素振り…。