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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)


side you

今これは…どういう状況…?

私は鉄朗の部屋で漫画を読んでて。
1巻だけのつもりが止まんなくなって4巻目を手にしてた。隣に腰かけた鉄朗のことなんてあまり気にしてなくて。

「朝、時間かけて準備してたってほんと?」

そんなこと聞かれると思わなかった。

自分すらなんであんなに時間をかけてたのかわからないのに。少し考えれば出るはずの答えに私は気づかないふりをしたかった。

『いつもと違う髪型に挑戦してみたんだけど…上手くいかなくて時間かかっちゃって…』

これはほんと。ふんわり巻きって意外と難しかった。思ってたより時間がかかってしまった。

「それって俺のためだと思っていいの?…そんな可愛い髪してさ、かわいい服着てさ、メイクまでしてくれて。」

トクトクと鼓動がスピードをあげる。私は鉄朗に可愛いって…思って欲しかったんだと思う。それが聞けて嬉しさと恥ずかしさがぐるぐると心を支配していく。

『て…てつろだってその服…私の好きなやつ。』

苦し紛れに話題を逸らしてみたけど

「うん、これはお前が褒めてくれたやつ。」

『…っ』

さらりと答えられてしまった。

「前みたいに褒めてもらえるかなあって。どう?今の俺が着ても似合ってます?」

『ぇあ、うん。すごく似合ってるよ。』

「ふは、うん。俺も今日のすっげえ可愛いと思うよ。髪巻いてんのなんて初めて見た。」

また…可愛いって言ってくれた。耳まで熱くなるのが分かる。ここから逃げたい。このまま一緒にいたら彼に捕まってしまいそうで逃げられなくなりそうで怖い。

帰ろうとする私を引き止めて、途端にワンピースを褒める鉄朗にクエスチョンマークが浮かぶ。だってさっきも褒めてくれたのに…?

あれ、待って…これはダメなやつだ

『てつろ…っ待って、だめ…っ!』

近づいてきた彼の手が背中に回ってチャックを数センチ下げた。1人では着られなくてお姉さんに手伝ってもらってやっと着られたのに…。

「脱がしやすい服なんて男の部屋で着たらだめですよ」

そんなつもりなんてなかったのに…鉄朗の考えてることが分からない。
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