第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
side黒尾
ゆっくりしてってねって…。
なんっっで2人にするんだよ!
親父たち帰ってこねえんだぞ!?
『あ…あの。このままいたら迷惑だろうし帰ろう…かな?』
ほら!ほらほら…警戒しちゃってますよ!?
「迷惑とかはまじでないから大丈夫だけど」
あんまり必死に引き止めたらダサいよな。ここは冷静に。自然に。まだ一緒にいたいのはきっと俺だけだろうから。
『あ…それじゃあもう少し、だけ。』
「うん。あ、プリン食おうよ」
『食べる!』
食い物に釣られるところは付き合ってた頃と変わらない。いつまでも子供みたいで本当に可愛いやつ。
「久々食ったけどやっぱうまー」
『私も久しぶりだあ。美味しいねえ』
「あ、そだ。が好きな漫画さ、姉貴が持ってて今俺の部屋にあんだけど止まんなくて全部読んじゃった。」
プリンを食いながら他愛のない会話を続ける。変な気を起こさないように…しねえと。
『え、全巻揃ってるの?』
「揃ってますよ」
『読みたい!!』
「おーいいよ、今?」
『一巻だけ今読んでもいい??』
「お好きにどうぞ」
わーい!と立ち上がった彼女がプリン片手に俺の部屋へと駆け出した。ん?俺の部屋…?
…まずいのでは。
この展開は…アウトなのでは??
急いで後を着いていくとベッドに背中を預けて既に漫画を開いていた。
『あーそうそう。こんな始まりだった!』
しばらく経って彼女を見ると2巻目を手にしていた。集中してますわ。これ俺の事全然忘れてるやつ。
「あー、さん?」
『んー?』
「おもろいすか?」
『んーうん、面白いよ〜』
ぜーんぜんこっち見ないな。ええ?
「隣座っていーですかあ」
『んー』
変な気を起こさないようにと離れて座っていたけど、話を聞いてんだか聞いてないんだか分からない彼女の返事を受けて隣に腰を降ろした。
真剣にページをめくり続ける彼女の手元には4巻目が。こりゃあ気が済むまでってやつですかね。
「朝、時間かけて準備してたってほんと?」
「…っえ、」
あまりに構ってくれないもんだから気になっていたことを聞いてしまった。
「の母ちゃんと父ちゃんがいってた。」
『…そ、れは』