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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)



「はい、これね」

差し出された紙袋の中を覗くと…ん?

『あ、あのこれって…』

「それねぇ可愛いでしょ」

『かわ…はい、でも私に似合うかな…』

「似合うに決まってるわよ!あとこれもね」

次に手渡されたのは背中にチャックの付いた真っ白なワンピース。切り返し部分のステッチにデザインがきいていて可愛らしい。

『かわいすぎます…今着たいくらいです!』

「良かった!私も着てるとこ見てみたーい!」

『着てみますねっ』

その場で直ぐに着替えてくるくると回る。揺れるスカートが可愛くて思わずうっとりしてしまう。

「やっぱ似合うー!今日着てきたピンクのカーディガンともぴったりだし、このまま着てたら?」

『そうします!』

リビングに戻ると鉄朗が温かいお茶を入れて待っていてくれた。

「おまたせー」

「んー」

『おまたせしました』

「んー、…っえ」

テレビを見たまま生返事をしていた鉄朗が振り返ってから少し目を見開いた。

『変…かな?』

「いや、似合ってる。着替えててびっくりしただけ。姉貴の服?」

『うん、頂いちゃったの』

「めちゃくちゃ似合ってるよ。今日の髪型ともすごい合ってると…思い、ます。」

『あ…ありがとうっ』

少し耳を染めて言うもんだからこっちまで紅くなってしまいそうになる。

「もごもご言ってんじゃないよ。素直に可愛いって言いな!!」

「う…姉貴は黙ってくれよ…」

「は?」

「すみませんでした。めちゃくちゃ可愛いです」

『ふふ、ありがとうっ』

いつもリードしてくれる鉄朗がお姉さんに逆らえないのが面白くて、2人のこのやり取りが大好きだった。懐かしくて嬉しくて思わず顔が綻ぶ。

prrrrr…

「あ、ごめん私だ。もしもーし」

お姉さんは電話に出るとバタバタと準備をしてアウターまで羽織っている。どこかに出かけるのだろうか。

「ん、すぐ行く。はーい。」

「どっか行くの?」

「うん、彼氏が近くに来てるらしいから会ってくる。ちゃんゆっくりしてってね!」

『あ、はい!』

「騒がしくてごめんな」

『え、ううん?』

むしろ会えて嬉しかったし。こんなに温かく迎えてくれるならもっと早く会いに来れば良かったとすら思った。
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