第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
ほどなくして流れるエンドロール。
隣には大粒の涙をこぼす彼女。
スクリーン内の明かりが付いてもなお余韻が抜けないらしく流れる涙をハンカチで何度も抑えている。
「大丈夫か?前見えっか?笑」
『うう…っごめ、ハンカチが…っ』
「そんなの気にしなくていいですよ。」
『最後戻れてよかったねえ…うぅっ』
「そうねえ」
『彼女にたくさん好きって伝えられたかなあ』
「離れる寂しさも誰かに任せる悔しさも経験したなら死ぬほど伝えるでしょ。好きって。二度と離れないって。」
離れる寂しさ。赤葦が隣にいる悔しさ。俺だって今まさに経験してる。
『きっとそうだよね。鉄朗ちゃんと楽しめた?』
「うん、面白かったしなんかすげえ響いた。」
痛いほどに響いた。俺のためのストーリーかと思うほどに。俺はやっぱりが好きだし、彼女の隣には俺がいたい。
『この監督の作品はメッセージ性が強いかもね。楽しめたなら良かったです!連れてきてくれてありがとう!』
「また別の作品でたら行こうか」
『うん!楽しみだね!』
こうやって次の約束があることだって今の俺には当たり前じゃない。ただの友達。ただの部活仲間。今は、まだ。