第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
side 黒尾
駅前の電気屋さんで研磨が欲しがっていたヘッドホンを買ってから、マフラーを探しに行く。
『無地がいいかな。チェックの方がいいかな?』
「うーん、無地のが研磨ぽいんじゃね?チェックも似合うだろうけど。」
『見て決めよっか。』
「そうねえ」
研磨にどんなものが似合うかと頭の中で考えているのだろう。くるくると表情の変わる彼女は見ていて飽きない。
『あ、ねえこれ可愛い。可愛すぎる?』
彼女が手に取ったのは茶色がベースになっているチェックのマフラー。ピンクと白も少し入っていて確かに可愛すぎるかもしれない。
「が付けるなら似合うけど研磨には可愛すぎるかもしれねえな。とくにこのピンクが。」
『そうだよね。あ、じゃあこれはどうかなあ?』
次も茶色ベースの大きなチェック柄。薄い黄色も織り込まれていて程よい色合い。
「お、似合いそう。研磨っぽいかも」
『じゃあこれにしよう!私買ってきちゃうね!』
しばらくして戻ってきた彼女の手には紙袋がひとつ。これで研磨のプレゼントは揃った。
「んじゃなんか食いいきます?ちょっと早いけど夕飯。映画もあるしちょうどいいか。」
『そうだねお腹空いたっ』
「何食べたい?」
彼女の答えはきっとパスタ、とか。
『うーん。パスタとかかな?』
「かな、と思って予約してます」
『うそ!?』
「うそ」
『もうびっくりしたよ!笑』
こうやって面白いくらいに表情を変えるが可愛くてついからかいたくなる。
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「すみません、予約してる黒尾です」
「黒尾様2名様ですね、お待ちしておりました」
『え?予約してたの…?さっき嘘って…』
「それも嘘です」
『もーっ!騙された…!』
「そこはさすがって言ってくださいよ」
『…そうだね。さすが鉄朗だよ。なんでも分かってるのね…ありがとう!』
うん、この笑顔が好きだ。
だからこの笑顔を守るのはいつだって俺でありたい。