第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
「ごめんお待たせ」
『ううんそれはこっちのセリフなんだけど…お兄ちゃんと何話してたの?』
「え、あー。男同士の話ですよ」
『ふうん』
一瞬目を泳がせて口ごもる彼はきっと何かを隠してる。お兄ちゃんてば鉄朗に変なこと言ってないでしょうね…。
「それより研磨のプレゼント。何にする?」
『んー…今まではゲームばっかりだったからね。本当は昨日研磨くんが買いに行ってたやつをあげようか悩んでたんだけど選択肢が消えちゃったなあ。』
実のところ、研磨くんへのプレゼントはゲームくらいしか思いつかない。大好きなアップルパイは誕生日ケーキの代わりだし。それをプレゼントするのはなんか違うもの。
「そういや今年は寒くなるらしいから新しいマフラー買おうかなって言ってたな。」
なんと!有力情報!!
「あと新しいヘッドホンがどーのこーのって言ってたわ。思い出した。」
『じゃあ今年はマフラーとヘッドホンかな』
「そうだな」
あぁやっぱり鉄朗を誘ってよかった。私一人じゃ研磨くんの欲しいものは分からないし、せっかくあげるなら喜んで欲しいもの。
『マフラーは何色がいいかなあ。』
「んー、俺よりお前の方がセンスいいし任せるよ」
『うーーん、研磨くんに似合う色…薄いブラウンとかだと制服にも合うし普段使いもしやすいかなあ』
音駒の真っ赤なジャージもユニフォームもすごく似合っているけど、派手な色はあまり好みではなさそうだし。
「じゃあ茶色のマフラーな。ヘッドホンはあいつが欲しがってたのあるからそれにしよう。」
『うんっ』
結局何にしようかって何だかんだ決まらない未来も予想してたけどすぐに決まって良かった。
「あっさり決まったし時間余りそうだな」
『そうね。鉄朗はどこか行きたいところある?』
「あー、そうだな。この前夜久と映画いってたろ?」
『うんうん』
「同じ監督の映画公開されてっからそれとか見に行きません?」
『私気になってたやつかも!行きたい!』
「じゃあ決まりで」
『わーい!』
些細なことを覚えているところも変わらない。いつだって楽しませてくれる。このままこうしてこの距離を保てたらいいな。