第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
いつもより時間をかけて準備をして、変じゃねえかなって何度も鏡を見て、姉貴の化粧水をこっそりつかって準備万端。
「あんたいつまで鏡の前いんの。」
「もう行くっつーの」
「私もちゃん好きだったからさ、またウチに連れてきてよ」
「ん、頑張ります」
妹が欲しかったんだといってすごく可愛がってたから。だって姉貴によく懐いてた。
家を出ての家に着くまで心臓はバクバク。迎えに行くなんて付き合ってた頃以来だな。
到着の電話を掛けようと携帯を手にした瞬間、ガチャリと玄関の扉が開いた。
「あら、鉄朗くん?」
「あ、お久しぶりです」
出てきたのはの母ちゃんで、俺を見つけるなり笑顔を見せてくれた。
「だからあの子ずっと鏡の前でなんかしてたのね…」
「え?」
「あの子ね、朝からずっと鏡の前でメイクやら髪やらやってるのよ。やけに時間かかってると思ったら鉄朗くんとデートだったのね。時間かけてたから可愛いって言ってあげてちょうだい、ふふっ」
「そ、うだったんすか?
そりゃあ言わないとっすね笑」
「外なんかいないで中入って待っててあげて」
「ありがとうございます、お邪魔します」
久しぶりに入るの家。付き合っていた頃と変わらない態度で迎えてくれたお母さんに心が温かくなる。リビングに通されるとの兄貴と親父さんがテレビゲームをしていた。いや、フルメンバーいるんかい。
「あれ、テツくん久しぶり!また背伸びた?」
「お久しぶりです。多分だいぶ伸びたっすね笑」
「テツー!俺より全然デカいなあ!笑」
テツくんと呼ぶお兄さんと、テツと呼ぶ親父さん。懐かしすぎて涙でそう…。
「の迎え?あの子朝から鏡占領してたから何事かと思ったけどテツとデートだからか。復縁したのか?お父さんテツなら大歓迎だぞ!」
「あー…それが。研磨のプレゼント買いに行くだけで。俺はまだ好きなんすけどね。」
自分で言ってて悲しい。
お父さんの言葉が嬉しすぎて泣ける。
「こんないい男と別れるなんてアイツ見る目ないな。お父さんが協力してやるからお嫁にもらってやってくれよな!」
「振り向いて貰えるように頑張ります」
お父さんが協力者は強者すぎやしないだろうか。