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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)


side黒尾

今日の帰り道もいつものように3人並んで歩く。唯一いつもと違うのはが赤葦のジャージを着てるってこと。

付き合ってりゃ泊まったりするだろうし、俺らだって付き合ってた頃は何度か互いの家に泊まってた。

まるで俺のものだとでもいうように自身の練習着を着せて牽制してくる赤葦。こっちは思惑通り大ダメージくらってますよ〜、と。

「俺、新しいゲームカセット買いたいからここで。じゃあね」

『また明日ね研磨くん』

「うん、また明日。クロも。」

「俺はついでかよ。」

最近とまともに会話してなかったかも。なんか変に緊張しちまうな。

『てつろ』

「ん」

『なんでも、ない。』

「え?なんだよ気になるんですけど」

遠慮がちに俺の名前を呼んだ彼女は続く言葉を飲み込んだ。

『いや、海くんが…』

「海になんか言われたの?」

『鉄朗と何かあったのかって。最近ちゃんと話してるかって。考えてみれば帰りは研磨くんとばかり話してたかもなあって。』

「あぁ…海がねえ。そうかもな。が研磨ばっかり構ってるんで俺はずーっと放置されてますよ。」

『え、そんなつもりじゃ…っ』

「ははっ、うそうそ。冗談ですよ。まあ俺のことも構ってほしいですけどね。」

あー…弱ってんのかね。
俺を構ってくれだなんて本心でしかない。
それを本人に言っちゃうなんて正気じゃねえ。

『鉄朗最近元気ないから。』

「俺元気よ?」

『なんていうか…上手く言えないけど上の空っていうか。』

「心配してくれてるんですか?」

『そりゃあするよ』

「ふーーーん」

俺の元気がないとが心配してくれるのか。どんな形だろうと彼女の頭の中に俺がいることが嬉しい。

『ふーんて!もう!なんで笑ってるの!私は真剣に…っ』

「分かってる。ありがとな。」

赤葦なんてやめて俺のとこに戻ってこいよ。

そう言えたらどんなにラクだろうか。
本当は今すぐお前の心が欲しい。でも今は彼女の頭の片隅にいられるだけでいい。今は隣を歩けるだけでいい。今は…今はまだ…。
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