第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
「お待たせしました」
『赤葦くんおかえりなさい』
「ただいまです」
『洗い物ありがとう。アイスもごちそうさま!』
「いや俺こそ美味しいご飯ありがとうございました。ほんとに美味しかったです。」
ベッドにもたれて座る彼女の隣に腰をおろして綺麗な髪に触れてみる。
『何かついてた?』
「いえ、綺麗だったのでつい。」
『赤葦くんは本当に褒め上手だね』
「そうですかね。さんは褒めるところしかないので無意識ですけど。」
本当は目が会う度にかわいいと言いそうになる。誰かにここまで惹かれるとは思ってなかった。もちろん木兎さんのプレーには惹き付けられるけどそういうのとは違う。
『赤葦くん』
「はい」
『あの、ごめんね眠くなってきちゃった…』
コクコクとしだした頭がしばらくしてコテンと俺に預けられる。
え、なにこの状況。
スースーと小さく聞こえる寝息。寝ちゃった?
「さん?」
『スー…』
「さんここで寝たら風邪ひきますよ。」
『ん、ん…』
「…仕方のない人ですね。」
ゆっくりと離れて彼女の身体を抱き上げる。ベッドの上へと静かに降ろして毛布をかけるとその手をきゅっと掴まれた。
「すみません起こしちゃいましたか?」
『ごめ…私寝ちゃって…あかあしくんも寝よ…?』
「はい、隣いいですか?」
『もちろんだよ』
彼女を壁際に寄せて隣へ潜り込むと華奢な身体がピタリと触れる。高校生2人がシングルベッドじゃさすがに狭いけどこればっかりは狭いスペースに感謝したい。小さな身体から伝わるぬくもりが心地よくて愛おしい。
「狭くてすみません」
『ううん?むしろ包まれてるみたいで安心するよ?』
背を向けていた彼女がくるりと振り返って俺を見上げるようにして言った。心音が聞こえてしまうほどにうるさい。
『赤葦くんあったかい…』
「暑くないですか?」
『私は大丈夫だけど赤葦くん暑い?』
「いえ、ちょうどいいです。それに心地いい。」
変な気を起こさぬよう平静を装ったまましばらくすると眠りに落ちていた。