第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
あ、いい匂いしてきた。
お腹すいたな。
『お待たせ!』
「美味しそう…」
トマト煮込みのハンバーグだ。いい匂い。
『食べよっか』
「はい、いただきます。」
やばい…めちゃくちゃ美味しい。
『ど、どうかな?』
「美味しすぎます。料理までできるなんて…さんに欠点ってあります?」
『え、さすがにあるよっ』
「そうですか?俺にはまだ見つけられないです。」
可愛らしい顔立ちに透き通るような白い肌。癖のない綺麗な髪。笑うとなくなる目と少し高い声。マネ業は求められている以上をこなしているように見えるし、不安を隠せていない俺の心のケアまでしてくれた。
そして料理まで上手。
この世に彼女以上の女性がいるのだろうか。
分からないけど俺は彼女以外思い浮かばない。
『そういう赤葦くんはなにか欠点があるの?』
「俺ですか?そんなのたくさんありますよ」
『そうかな?私もまだ赤葦くんの欠点見つけられないよ?』
「気遣わなくていいですよ…」
俺の欠点なんて挙げだしたらキリがない。
木兎さんのように周りを圧巻させるプレイヤーではないし、部の中にいれば身長だって目立って高くもない。生活力はそこそこあると思うけど彼女みたいに手際よく料理はできない。
『気なんて遣ってないよ本当のことだよ。これからたくさんお互いのこと知っていこうね。』
「…っ、はい。」
これからがあるのだと思わせてくれる彼女が愛おしい。付き合っているのだから当たり前のことかもしれないけれど、まだどこか夢見心地な俺にとって一緒にいる未来を考えられることがどんなに幸せか。
「片付け俺がやるんで先部屋戻っててください」
『私も一緒にやるよ』
「いえ、作ってもらったので。これ食べて部屋で待っててください。」
彼女に手渡したのは以前好きだと言っていたアイス。
『これ…用意してくれてたの?』
「好きだって言ってたので。」
『ありがとう赤葦くんっ』
そう言って俺の部屋へと戻っていく彼女を横目に見送り、食器の片付けをする。俺も早く戻ろう。