第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
普段はうすらとメイクをしていたのだろうか。
お風呂上がりはどこか幼く見える。
「さんて普段メイクとかしてますか?」
『あ、うん眉毛だけ書いてるよ〜』
「そうなんですね。なんだか少し幼いなあって…思って。」
『合宿でお風呂上がり会わなかったかな?』
「あぁ…でも薄暗かったから気が付かなかったのかも。」
『そっかぁ、でも眉毛で結構印象変わるよね』
「そうですね。でもどっちも可愛いです。」
『ふふ、赤葦くんもかっこいいよ!』
「お…れのことは褒めなくていいですから…」
心臓に悪い…無邪気な笑顔で伝えてくれる彼女。その笑顔が可愛くて愛おしくて、守りたいっていうのはこういう存在のことなんだと初めて思った。
「お腹すきません?」
『そうだね、何か作る?』
「簡単なものしか作れませんけどそれでも良ければ」
オムライスとか焼きそばとか本当に簡単なものしか作れない…こんなことなら練習しとけばよかったな。
『お邪魔してるし私が作りますよ?』
「え、さんの手料理ですか」
『あ、うん。もしかして人の手作りとか苦手…だった?』
「いえ、そんなんじゃないです。そうだったとしても貴方のは食べられるんですけどそうじゃなくて…お願いしていいんですか?」
『もちろんだよ、何が食べたい?』
「え、っと…ハンバーグとか…ですかね」
『ハンバーグいいね!そうしよっか』
2人で近くのスーパーに行って必要なものを揃えた。俺には料理なんてよく分からないから彼女に教えて貰いながらだけど、こういうの新婚…みたいで少しくすぐったい。
『じゃあキッチン借りるね』
「はい、好きに使ってください。何か必要なものとかあったらすぐ言ってくださいね。」
『うん、ありがとう』
「ほんとに手伝わなくていいんですか?」
『大丈夫だよ座ってて!』
そう言って手際よく作業を進める彼女。俺が手伝う方がかえって邪魔になるかもしれないやつかな。大人しく待っていよう。