第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
side you
赤葦くんが好き。
気づけばそう口にしていた。
自分は木兎くんのお飾りに過ぎないだなんて言うから。君にはたくさん魅力があるって知って欲しかった。スラッと高い身長も、華奢にみえて意外と筋肉のある身体も、しっかりしていて真面目なところも、全部キミの魅力だから。
毎日好きだと伝えてくれる赤葦くん。
そんな彼に応えたいと思うようになった。
次第に惹かれていくのが自分でも分かる。
『不安にさせてごめね。』
「俺こそ…気を遣わせてしまってすみません。」
『赤葦くんはわがままを言わなすぎるから…ほら、私一応先輩だし。たまには甘えてくれたっていいんだよ?』
「いいんですか?あの…でも俺さんに重いとか思われたら…」
『わがままくらい笑って受け入れるのが恋人なんだよ』
鉄朗がよく言ってた。
お前のわがままも不機嫌も何もかも笑って受け入れるのが彼氏である俺の役割だって。彼の受け売りだって知ったら赤葦くんは悲しむかな。
「わがまま言ってもいいんですか…?」
『もちろんだよ』
「そしたらあの…今日寝る時…」
『うん』
「隣で寝てくれませんか?」
『いいよ』
恋人同士が隣で眠るのは不思議じゃないし、そんなことを “わがまま“ だと遠慮してしまう赤葦くんが可愛らしい。
「あ、風呂とか…入りますよね。用意するんで待っててください。」
私を抱き上げてふわりとベッドにおろすと部屋から出ていく赤葦くん。しばらくして戻ってきた彼の手にはバスタオル。
「着替え大きいかもですけどこれ使ってください。お風呂の使い方分からなかったら声掛けてくださいね。タオルはこれを。」
『うん、ありがと。』
私をバスルームに押し込めると背を向けてすぐに出ていってしまう彼。甘えて欲しいなんて私の独りよがりだったのかな。無理に言わせちゃった…かな。