第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)

赤葦くんも緊張するんだね、とクスクス笑う彼女。可愛いね、と言って俺を見上げる。あなたの方がよっぽど、ですよ。

｢可愛いはあんまり言われたことないです。｣

『そうだよね、男の子に可愛いは失礼だったよね。うん、赤葦くんはかっこいいもんね。』

｢あ…ぇ、え？｣

さん今なんて…え。俺のこと…。

『えっと、かっこいい…よ？』

｢あの…ほんと、ですか｣

『え、赤葦くんはかっこいいよ？』

好きな人から言われるのってこんなに嬉しいのか。やばい、また心臓ドクドク鳴ってる。

｢めちゃくちゃ…嬉しい、です。｣

『えへへ、良かったです』

これ以上の好きって存在するのだろうか。毎日そう思うのに一緒にいると毎秒更新されるように好きが溢れてくる。

｢はあ…夢みたいです。｣

『どうして？』

｢俺には恋人とかそういうの無縁だと思ってましたから。｣

『でも赤葦くんモテるでしょ？』

｢どうでしょうか。木兎さんはどこにいたって人の目を惹きますからね。きっと俺の事なんて誰も見てないですよ。｣

現に木兎さん目当ての女子生徒はすごく多い。不思議と同学年のファンの人はあまり見たことがないけど、1、3年生の大半は木兎さんを見に来てるからな。

『赤葦くんは集団の中にいると分かりずらいけど、近くで見るとやっぱりすごく背が高いし、華奢に見えて筋肉ついてるし、たまにどっちが先輩か分かんないくらいしっかりしてるし、えっとあとは…』

｢き、急にやめてくださいよ…もういいですから…照れます｣

『ううん、まだあるよ待ってね』

そう言って大きな瞳が俺を見つめから

『言うのが遅くなってごめんね。好きだよ赤葦くん。』

｢は…え？なんて…｣

『赤葦くんが好きだよ。』

｢あなたって人は…これ以上好きにさせて俺をどうしたいんですか…？｣

｢不安にさせてたかなあって。鉄朗とはほんとに何もないけど、付き合ってたのは本当だし部活で毎日一緒だし。赤葦くんは何も言わないけど私ならきっと不安だから…。｣

言わないのは重いと思われたくないから。
あなたに嫌われたくないから。
少しでも余裕のある男に見せたいから。

本当は不安で仕方なかった。いつか黒尾さんの手を取ってしまったらって怖かった。なのに、あなたから貰った初めての好きはこんなにも俺を安心させる。