第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
side赤葦
腕の中にすっぽりと納まって俺を見上げるさん。自然と上目遣いになっているけど破壊力がすごい。可愛すぎるのでは。
「さん俺ほんとに…」
『うん?』
「大好きです。」
『もう…なに、照れるよ…っ』
そう言って目線をそらされてしまった。
ぷくりと少しだけ膨れた頬。柔らかそうだな。
『…っえ、なになに』
「あ、すみません。ほっぺた柔らかそうだなと思ってつい…」
ふに、と片手で彼女の頬を挟むように触れる。柔らかくてもちもちしていて、赤ちゃんみたいだと思った。
『そんなに触って楽しい…?』
「はい、柔らかくて気持ちいです。」
『赤葦くんが楽しいならいんだけど…』
むにむにとされるがまま頬を触られているさん。真っ白でお餅のような肌。唇で挟むようにぱくりと触れるとピクリと身体が揺れた。
『あ、あ…かあしくん?』
「お餅みたいだったので…美味しそうだなって。」
『お、美味しくないよ?』
「美味しいですよ。ほんとはあなたの全部を食べてしまいたいくらいです。」
『な…っ何言って…』
ふいっと視線を下げてしまった彼女を抱きしめたまま今度は頬にキスを落とす。
『な…っな、なに…っ』
「ほんとは口にしたかったんですけどね。なんだかさんがショートしてしまいそうだったので今は頬で我慢します。」
『な…っもう!からかってるでしょっ』
「黒尾さんと付き合ってたなんて嘘みたいにウブな反応してくれるのが嬉しくて…嫌でしたか?」
『嫌なわけ…ないよ?』
触れるだけで、腕の中にいる彼女は頬を染めてくれる。我慢できずに頬にしてしまったキスも彼女は怒らず受け入れてくれた。さんがショートしそうだから、なんて言って誤魔化したけど本当は俺の心臓と理性が持たないから。
『あ、の…赤葦くん』
「はい」
『その、心臓の音が…』
「聞こえちゃいました?」
『うん。今も…すごいドクドク鳴ってる。』
「好きな人が自分の腕の中に居るんですからそりゃあ…それに俺にとっては初めてできた恋人なので…緊張もしてます。」
『え、緊張してたの?ふふっ可愛いね赤葦くん。』
俺の緊張を知ってか少しだけ彼女の表情が和らいだ気がした。