第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
赤葦くんと恋人同士になって半月が経った。あれから1度会ったきり夏休みが終わった。毎日連絡はとっているけどお互いに部活が忙しくてなかなか時間が合わない。
「〜」
『はーい』
「なんか雰囲気変わった?」
『え、そうかな?』
「うんなんか…「さらに綺麗になった!」
「おい夜久!!俺が言おうとしたんですけど!」
「言うのおっせーんだもん」
赤葦くんのおかげだろうか。会ってる時も電話口でも可愛いと毎日のように言ってくれるから。
「ちゃん好きな人でもいんの?」
『な、なんで…っ』
「女の子は恋すると綺麗になるって聞いた事あったからさ」
『き、気のせいだよ!』
「…まじ?」
分からない…どうしてそんなに切ない声で私の名前を呼ぶの。どうしてそんなに悲しそうな顔をするの。
『ほんとに気のせい…だよ』
言えるわけがなかった。あんな顔をさせてる理由も分からずにただ…時間だけが過ぎていく。
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それからまた半月後。
今日は梟谷高校との練習試合が行われている。
「あかーしトスよこせ!」
「はいっ」
「ワーンチ!研磨ァ俺に戻せ!」
空中を舞うボール。飛び交う声。鉄朗は変わらず調子がいいみたい。赤葦くんは言っていた通りプレイに集中している。前に見た時よりもトスの精度があがっているし、公私混同をしないタイプらしい。
「休憩挟もうか」
両校のキャプテンの掛け声で一斉にコートから出てくる選手たち。
「さん俺のセットアップどうでしたか」
コートを出るとすぐに駆け寄ってくる赤葦くん。
『前よりも精度あがって見えたよ。すごい!』
「さんのおかげです。」
『え?私は何も…』
少し腰を折って私の耳元に口を近づけた彼が
「大好きなあなたに褒めてもらいたくて頑張りました」
なんて、顔色ひとつ変えずに言う。
「あ、あかーしまたのとこいるのか!大好きなんだな!!」
満面の笑みと大きな声を響かせる木兎くん。
「はい、大好きです」
照れる様子もなくそう返す赤葦くんに動揺したのは私だけではなかった。振り返らなくてもわかる。後ろに立つ鉄朗の声があまりにも低い。
「…は?」