第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
side you
赤葦くんから2度目の告白。
彼は聡明で優しくてバレーボールが好きで。梟谷高校バレー部での全国制覇をきっと夢見てる。彼らの邪魔なんてできない。
「ダメでしょうか…?」
『ダメっていうよりは…』
邪魔をしたくない。バレーをしてる赤葦くんが輝いていることを知っているから。
「俺の…彼女になってくれませんか?」
隣に腰を掛けていた赤葦くんが床に片膝をついて私を覗き込むように見上げる。
赤葦くんとなら…もしかしたら大丈夫かもしれない。不思議とそう思わせてくれるような彼の雰囲気と言葉。この手を取っても…いいの?
『もし…喧嘩しちゃって普段通りのプレイが…っ「善処しますよ。俺は大丈夫ですさん。怖がらないでください。」
私の不安を断ち切るかのように彼は言った。この言葉に嘘は無いと思う。
『信じてもいいの…?』
「もちろん。…もう一度言います。
俺の彼女になってくれませんか?」
今度は私の手に自身の手を重ねて真っ直ぐに目を見ながら紡がれた言葉。トクりと心臓が跳ねた。彼を信じよう。前に…進もう。
『私なんかで良ければ…お願いします。』
「なんかじゃない。あなたじゃなきゃダメですよ。」
『ぅん…なんか、照れるね。』
「照れますね…はあ、幸せすぎてどうにかなりそうです。あの、抱きしめても良いですか。」
『え、あ、うん…っ』
立膝になった赤葦くんが優しく私を抱きしめる。トクトクと鼓動の音が伝わってくる。緊張…してたのかな。
「さん」
『はい』
「大好き。」
『…赤葦くんて好きとかたくさん伝えるタイプですか?』
「分からないです。付き合った人も好きになった人も貴方が初めてなので。でも…そうですね、口から勝手に溢れてくるのでたくさん言ってしまうかもしれません。」
彼の鼓動につられるように私の鼓動も早くなるのが分かる。赤葦くんと恋人同士…か。慣れる気がしないなぁ。
『私もたまには伝えます…だから待っててね』
「はい。楽しみに待ってます。」
誰かに抱きしめられるのってこんなに温かかったっけ。好きだと伝えられることはこんなに心臓が跳ねるものだっけ。忘れそうだった感覚を赤葦くんが思い出させてくれる。