第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
『ごめんね赤葦くん…』
「なんであなたが謝るんですか」
『嫌な気持ちにさせたよね。』
「嫌な気持ちになったのはあなたでしょう?俺も大きな声出してすみませんでした。怖かった…ですよね?」
『あ、ううん…私はきっと言い返せないからさ。ありがとう。』
彼女がこんなに悲しい顔をしているのに、苦しんでるのに…部外者の俺にはなにもできない。
「…行き先変更します。」
『え、どこいくの…っ』
「俺の家です。」
『…え?』
戸惑う彼女の手を引いて駅に向かい電車に乗って自宅を目指す。親は仕事でいない。家に連れ込もうなんて考えてなかったけど、さすがに外では話せない。
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「ここ俺の部屋なんで荷物適当に置いてください。飲み物持ってきます」
『あ、うん。』
飲み物を持って部屋に戻ると彼女はカバンを持ったまま立っていた。
「荷物かしてください。はい、ここ座って」
『はい…っ』
彼女の手からスクールバッグを奪ってベッドに腰掛けさせる。
「急に連れ込んだりしてすみません。外で話すような事じゃないかと思って…」
『あ、ううん。気遣ってくれてありがとうね。』
「さん」
『はい』
「ああいうのって今日が初めてですか?」
『直接言われたのは初めて…だよ。いつもは体育館のギャラリーから見てて…なにか言ってるんだけど聞こえないから。』
「毎日ですか?」
『あ、ううん。週に1.2回とかかな。でも前に鉄朗が注意してくれて…それからはあんまりなかったんだけど…。』
そりゃそうか。あの黒尾さんが黙ってるわけない。
「俺にあなたを守らせてくれませんか?」
『…え?』
「学校違うんでその…常に傍にいるとかは物理的に無理ですが。俺の彼女だって分かれば黒尾さんたちに興味はないって示せると思うんです。」
『なる、ほど…』
「それに、俺はあなたを想うと最高のプレイができます。バレーの邪魔なんてとんでもない。俺の彼女になってくれませんか?」
いろいろこじつけて我ながらずるいとは思う。それでも俺はどうしてもあなたが欲しい。