第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
side赤葦
勝ったらさんとデート。
それだけを考えていた最終セット。最後はなんだか自分の得点で勝ちたくなって、セットアップモーションからツーに切りかえた。途中までは木兎さんに本気であげるつもりだったし、それが逆に良かったらしく木兎さんに合わせに来た音駒ブロックは完全に振られ俺のツーが決まった。
「さん」
『あ、赤葦くん』
挨拶を終えてすぐ音駒コートの外にいる彼女へと駆け寄る。
「勝ちました」
『うん、最後のツーアタック凄かった!』
彼女が見ていてくれたことが嬉しい。
褒めてくれたことが嬉しい。
「約束、覚えてますか?」
『もち…ろんです』
「良かった。また連絡します」
『うん』
約束も覚えてくれていた。バレーをしているとき、バレー以外のことを考えていたのは今日が初めてだった。自分の頭の中がさんでいっぱいになっていくのが分かる。
だけどそれと同じくらい彼女を振り向かせられるようなプレイをしたいとも思う。彼女と出会って、いろんなことが輝いて見える。
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その日の夜、帰宅するやいなや彼女にメールを送った。
《お疲れ様です。
さんご都合いい日ありますか?》
悩んだ末にこれだけを送るとすぐに返ってきた。
《赤葦くんお疲れ様!
近々だと明日部活のあと空いてるよ〜っ》
明日か。うちも今日練習試合をしたし明日は午前で終わらせるって3年生が話してたっけ。
《俺も明日空いてます。部活終わったら音駒まで迎えに行くので待っててください。》
さんは昼過ぎまで部活みたいだし、待ち合わせるより俺が迎えに行った方が早い。それに少しでも早く会いたい。