第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
side you
迎えた梟谷高校との練習試合。
両校とも気合いが入っている。
「〜」
『はあい』
「音駒の応援をしてくださいね?」
『ん?分かってるよ!』
隣に立つ鉄朗が言い聞かせるようにそう言った。
「…赤葦さっきからすっげえお前のこと見てっからさ、お前は俺たちだけ見てて。」
私たちの視線の先にいる赤葦くんはこちらへと向かって歩いているように見える。
『見る、ますっ』
「やっぱなんかあった?この前2人で出かけたんだろ!?」
『なにも…ないっ』
赤葦くんから告白をされた事は誰にも言ってない。ましてや鉄朗に言えるわけがない。なぜか赤葦くんを敵対視しているみたいだから。
「さん」
『は、はいっ』
「あかーしくんココ音駒ですぅ!梟谷はアッチでしょーが!」
「絶対勝ちます。俺のセットアップも見ててくださいね」
『が、頑張って…ね』
「はい」
それだけを伝えて梟谷の輪の中へと戻っていく赤葦くん。
「はあ?はあ!?なんだあいつ!にちょっかいかけんなっつーの!そんで俺のことはガンスルーかよ!」
『ちょ、ちょっと鉄朗…』
「頑張ってとかライバル校に言わないこと!」
『ごめんなさい…』
「黒尾声でけえって。ちゃん怖がってる。」
「あ、ごめん」
『ううん。私が無神経でした。』
夜久くんが間に入ってくれて話は終わったかのように思えた。けど…。
「あ、ー!!!この前さ!この前赤葦とデートしてたろ!?」
この声は…っ
『ぇあ、木兎くん…っ』
「なあなあ付き合った?付き合った!?告白したってあかーし言ってたぞ!」
『いや、えと…っ』
「ちょっと木兎さん?!さんを困らせないでください!」
「だあってお前なんにも教えてくんねえんだもん!」
「話しますから試合終わってからにしてください…!」
「ちぇーっ」
ずるずると引きずられていく木兎くんを横目になんだか不機嫌な鉄朗。
『て、鉄朗…どうしたの?』
「ぜってぇ勝つ。」
『あ、うんっ頑張って!』
ネットを挟んで向かい合う鉄朗と赤葦くんは心做しか火花が散っているように…見える。