第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
『よし、じゃあ赤葦くんの行きたいとこ行こっか!』
「はい」
『どこ行くの??』
「うーん、ついてからのお楽しみで。」
『わかった楽しみにしておくね』
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『…わあ。綺麗』
東京湾を一望できる公園。たまに屋形船が通ったりなんかしてすごく綺麗な場所。
「さん海とか好きそうだなって勝手な俺のイメージですけど…。」
『東京だとあんまり海って行かないからね。特別な感じがして大好きだよ。素敵なところに連れてきてくれてありがとう赤葦くん!』
「喜んでくれて…俺も嬉しいです」
海風に揺れる柔らかい黒髪。
触れてみたいと思った。
『赤葦くん?どうしたの』
「いや…綺麗な髪だなって。」
『ふふ、ありがとう』
「黒尾さんとさんてどういう関係ですか?」
『え…?』
驚いて目を丸くした彼女。こんなこと聞くつもりじゃなかったんだけどな…気になりすぎて聞いてしまった。
「ふ、普通に選手とマネージャーだよ…?」
『それにしては黒尾さん過保護すぎませんか』
「そう、かな…?」
黒尾さんは絶対にさんのことが好きなはずなのに、どこかで一線を引いているような。でも彼女に何かあればすぐに飛んでくる。なのになんで…なんで彼氏というポジションではないのだろうか。あの人なら好きだと素直に伝えそうなのに。
「…もしかして元彼…とかだったりします?」
『ぇ、あ…えっと。』
「当たり、ですかね」
『ぅん…中学校を卒業するときにお別れしたの。』
ズキン、と心臓が痛む。
心のどこかでこの可能性を覚悟していた。
合宿中の様子をみるにフラれたのは黒尾さんだろう。あの人はまだ彼女のことが好きで、さんも嫌いになって別れたんじゃなさそうだし。
「…理由ってきいても?」
『鉄朗の邪魔をしたくなかったんだよ。バレーボールをしてる彼が1番輝いてるから。』
「それだけ、ですか?」
『うん、それだけだよ。今は鉄朗や皆のサポートが出来ればいいと思ってる。バレーに集中出来る環境を作れたらいいなって。』
一瞬勝てないと思ってしまった。だってこの人はきっと今だって黒尾さんのことが好きなのだから。それでも諦めたくないと思うほどに俺は彼女を好きななっていた。