第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
side赤葦
いつもより眠れなかった気がする。楽しみだったのと、若干の緊張と…目が早く覚めて、家にいても仕方ないと思った。予定より早く家を出て待ち合わせより30分前に到着してしまった。
ガラスの反射に映る自分を何度も見て変じゃないだろうかと不安になる。さんはどんな服を来てくるかな。
日取りが決まってすぐ、浮かれていたのか雀田さんにいい事でもあったのかと聞かれた。服装とかいろいろ悩んでたし女性意見は大切だと思ってマネ陣に相談したところいつもは着ないような服装になってしまった。
『ごめんねお待たせ!』
視界に飛び込んできたさんは正直天使が舞い降りたのかと思ったくらいには綺麗で可愛らしかった。
「全然待ってないですよ。」
『来るの早いね赤葦くん』
「楽しみだったんでつい、です。」
なんて素直に言ってしまうくらいには浮かれている。
不安だった服装もお洒落だと言ってくれた。彼女の隣に並んでも変じゃないだろうか…不安は尽きそうにないが今度雀田さん達にちゃんとお礼を言おう。
さんは白のワンピースにピンク色の透けたインナーを合わせていて、すごく似合っているしイメージ通りだと思った。
『じゃあ行こっか!』
「はい」
彼女の隣を並んで歩いて、周りから見れば恋人同士に見えていたりしないだろうか。
『赤葦くんって木兎くんと中学校一緒だったの?』
「いえ。なぜですか?」
『仲良しだし、木兎くんがすごく信頼してるように見えるから。前からの知った仲なのかなあって思ったの。』
「信頼…されているでしょうか」
『木兎くんにトスをあげる赤葦くんはすごく楽しそうだし木兎くんも気持ちよさそうに打ってるよ。』
「素直に嬉しい…です。第三者の目から言われると信憑性があって上手く言えないですけど凄く…嬉しいです。」
バレー以外は問題児だけど、バレーをしてる木兎さんは1番かっこいい。この人がいるから大丈夫だと心から思える不思議な人。そんな人にトスをあげられる俺はすごく幸せだと思う。