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今宵は誰の腕の中で眠りますか⋯?

第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)



連れてこられたカフェはの言っていた通り落ち着いた雰囲気のあるカフェ。でも程よく話し声が聞こえて心地いいざわつき具合。

「何飲む?」

『私ここ来たら絶対ココア!』

「ふーん、美味いんだ?」

『濃厚ですっごい美味しいんだあ』

「んじゃ俺もそうしようかな。先席取っといてもらってもいい?座って待ってて。」

『分かった、ありがとう鉄朗』

荷物持ってくね、と俺の手からバッグを受け取って席へと持って行ってくれる彼女。付き合っているときもそうだった。電車で1席しか空いてない時、もちろんを座らせるんだけど代わりに荷物持つよって毎回言ってくれてた。小さい気遣いをさりげなくしてくれる彼女を俺も見習わないとなって何度も思った。

ココア2つといちごタルトを1つ。
の好きなものは何だって覚えてる。

「お待たせ」

『ありがと〜いくらだった?』

「いやいいよ、俺が行きたいって言ったし」

『でもキーホルダーだって買ってくれたし、それにこのタルトって…』

「いちごタルト好きだったよね」

『好き。でも悪いよ…』

「いいんだっていつも俺たちのために頑張ってくれてんだから。これじゃ足りないくらいですよ。」

『鉄朗…泣きそう…』

「え、な…なんで!?」

大きな瞳が薄らと濡れていく。
これホントに泣いちゃうパターン!?

「ごめん、嫌だった!?」

『ちがう…嬉しくて。みんなの為になにかできてるって不安になったりするから…こういうの嬉しくてダメみたい…っ』

「十分すぎて感謝してもしきれないくらいですよ?」

『あり…がと…っ』

「はい、泣き止んで?タルト食べて笑顔見せてください」

フォークを持たせるとぱくりとタルトを口に運んですぐに笑顔をみせてくれた彼女。この笑顔が大好きで、この笑顔のためなら俺は何だってできる気がする。

『美味しいっ』

「良かった。ココアもめっちゃ美味いわ」

『でしょでしょ、また来ようね』

「うん絶対な」

次の約束なんて口約束にすぎなくとも俺にはすごく大切なことで大事で死ぬほど嬉しい。付き合ってる時に戻ったみたいな感覚になる。この時間がずっと続けばいいのに。
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