第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
最寄り駅。改札を出て少し歩いたところでが足を止める。
『じゃあ、今日ありがとうございました』
「いえいえ」
『私の家あっちなので』
「知ってますよ」
『そ、うだよね!じゃあまた明日ね』
少しよそよそしいのはこの道を何度も2人で通ったからだろうか。付き合ってた頃でも思い出してるのかね。今はそれでもいいから俺の事を少しでも考えていてほしい。
「送ってってもいい?」
『え、でも鉄朗の家は反対だよ』
「…だめですか?」
『だめってわけじゃ…』
「んじゃ送らせて」
「あ、うん」
別れを告げられたあの日から、を家まで送ったことは1度もなかった。そのせいか送るなんて言い出したわりに会話が見つからない。
「あー、お母さんとか元気?お兄さんとか」
『うん、みんな元気だよ』
「そっか。」
『うん。』
え、会話終わった?さっきまでは普通に話せてたのになんでかなー。絶対にこの状況が悪いんだけどでももっと一緒にいたかったし…。
「えと、部活どう?辞めたくなったりとかない?」
『辞めたいなんて1回も思ったことないよ?みんな優しいし、それに強いもん。みんなの夢を近くでサポート出来ることがすごく幸せ。』
「俺らもお前いなくなったらすげえ困るんで…引退までいてくんねえかなって夜久と話してたくらいですよ。」
『え、ほんとに?実は私も思ってた…!去年は春高前にやめちゃったけど今年はこのままマネージャーになろうかなって…猫又監督に相談するつもりだったの。』
そんなん色んな意味で願ったり叶ったりですけど!?
「まじ?喜ぶヤツしかいねえと思うんで是非お願いしたいです。」
『じゃあ近々監督に話してみるね』
「ん、お願い」
えーやっばあ。今年も夏が終わったらいなくなっちまうと思ってたからこれはヤバイ。激アツ展開。引退まで一緒とかなんの夢ですか?一緒に春高行きてえな…。