第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
「はい、どーぞ」
『わあ…うれしい』
受け取るなり袋から取り出してバッグにキーホルダーを付ける彼女。
「付けてくれるの」
『え?うん、だってこんなに可愛いんだもん。それに頑張ってるご褒美だって言うから嬉しくて。ありがとう鉄朗!』
「いいえ。喜んでくれて良かったです。」
何度もキーホルダーを眺めては嬉しそうに笑う彼女はまるで付き合っていた頃みたいで胸が締め付けられる。あの時のまま変わらないのは俺が君を好きだってことだけだから。
『次はどこ行こっか』
え、なんも考えてなかった。まだ一緒にいられるとは思わなかったから。
「次…えっと、」
『鉄朗の行きたいところにしようよ』
「いーの?」
『カフェも雑貨屋さんも付き合ってもらったし。』
「あ、じゃあ…ゆっくりできるとこがいいな」
『…カフェ?』
「本日2回目のカフェいっちゃいます?笑」
『いっちゃおーっ!』
こういうとき、さっき行ったじゃん。とか、は絶対に言わない。いつだって肯定してくれて、楽しそうにしてくれる。そんな彼女が好きで、大好きで…といると心から楽しいと思える。
毎日の何気ない景色が何もかも違くみえる。楽しくて幸せで明るくて…お前の好きな人にもう1度なれたらな。
「あ、俺カフェ全然しらねえや。」
『私にまかせなさーいっ』
「ついていきまーす」
最寄り駅の数駅手前。
「俺ここあんま来たことないや」
『落ち着いた雰囲気のカフェが多いんだよ!前に赤葦くんに勧めたカフェもここの駅にあるよ〜』
「…今度赤葦と一緒に行くとこですか?」
『ううん、それとは別のところだよ。勉強するのにいいカフェ知らないかって聞かれたから教えたの。』
1回目の合宿後から随分連絡とってんだなあ、って。想像するだけでまじで無理。
赤葦と2人でどんなところに行くのか知りたい気もするし、知りたくない気もする。俺ってのことになるとくそ面倒臭いのな。