第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
『てつろ…?』
「…あ、え。なに?」
『元気ないの?』
「いや…まあ、少し。」
スクイズをもったままぼーっと体育館の天井を眺めていた彼に声をかけるとすごく驚いたような顔をしていた。
並べられたパイプ椅子に腰掛ける彼は私の目線より下にいる。それが何だか珍しくて気づけば頭を撫でていた。
『元気だして。鉄朗のプレイ好きよ。』
「…っは、?」
『あ、ご…ごめんねっ』
「いや、いやいやいいんですけど!え、俺お前に嫌われたかと思ってたけど違った…?」
『え?なんで…そんなわけないよ。』
「…っなんだ。よかった。」
心底安心したような表情をしてから立ち上がった鉄朗の両手が私の頬を包んだ。
『ふぇ』
「元気でた。さんきゅ」
それだけ言ってまたコートへと戻って行った。
久しぶりに…あんな触れられ方をした。
鉄朗のあの大きな手に頬を包まれたのはいつぶりだろうか。付き合ってた頃はそうして高い身長を屈ませてキスをしてくれた。懐かしくて涙が出そうになる。
もう二度と…彼の邪魔はしないと誓ったじゃない。