第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
合宿最終日。毎年恒例のBBQ。
「肉食えてる?」
『食べられてるよ。ありがとね』
マネージャー同士でガールズトークをしながら楽しんでいる所へやってきた鉄朗。手にもっているお皿には焼けたお肉が乗っていた。
「全然食ってねーじゃん。これやるから食いな」
『鉄朗の分は?』
「あるから平気ですよ。飲み物は?」
『あ、自分で取りに行くからいいよ』
「いいって、ジャスミン茶?」
『あ、うん。ごめんね。』
「女の子たち同士で楽しくお話してなさいよ」
直ぐに戻ってきた鉄朗からジャスミン茶を手渡される。ご丁寧にコップに名前まで書いてくれた。「ちゃん♡」と。
『名前まで…ありがとう』
「なんか欲しいものあったら言いなさいね。てつろーくんが取ってくるから。お嬢さんは座ってなさいな。」
ふわふわとした空気の中、声を出したのはかおりちゃん。
「ごめん我慢できないわ。黒尾くん過保護すぎじゃない!?」
「うちの紅一点ですから。甘やかしますよそりゃ。」
ふわりと私の頭を撫でて夜久くんたちのいる場所へと戻っていく鉄朗。みんなの視線が痛い。
「ねえ、やっぱりっていうかどう考えても黒尾くんちゃんのこと好きだよね?」
『な、ないよ…っ』
「あれで好きじゃなかったら引くんだけど〜。あ、赤葦来たわ。」
『え?』
赤葦くんが来たと言って鉄朗の話はそこで終わった。
「さんちゃんと食べられてま…すね。」
『あ、このお肉はさっき鉄朗がくれて。』
「女の子に肉ばっかって…野菜取ってきますよ。」
くるりと背を向けて行ってしまう赤葦くん。
「なんっなのもー!青春じゃーん!これよこれえ!夏といえば!三角関係でしょ〜っ!」
『ちょ、ちょっと盛り上がりすぎだよ〜』
「だって見た?あの赤葦の顔!黒尾くんに先越されたから妬いてんだよ!可愛いとこあるんだから〜あ」
「聞こえてますよ。はいさん野菜どーぞ。焼きマシュマロも付けておきました。」
『マシュマロも…焼くの早いね?』
「木兎さんが馬鹿みたいに作ってたんで奪…貰ってきたんです。」
奪ってきたんだね。一瞬で戻ってきたからびっくりしたけど木兎くんから奪ったんだね。だって遠くからでもわかるもんしょぼくれてる。