第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
体育館へ移動してもなんだか考え込んだ様子の。夜久に言われたことを気にしてるのだろうか。俺とそういう風に見られるのが嫌だったのだろうか。
「…えと、大丈夫か?」
『…え?』
「なんか考え込んでるから…朝のこと気にしてる?」
『あ、いや…ううん平気だよ』
そう言ってヘラりと笑ってみせる彼女は俺の好きな笑顔じゃない。
「嘘。無理に笑わなくていいから。」
『ふふ、鉄朗はなんでも分かっちゃうね』
「…そりゃあまあ…元彼、ですから。」
自分で言ってて苦しくなる。お前の彼氏だから俺はなんでも分かるよって。俺を頼って。俺だけを…って言えたらどんなに良いだろうか。お前がまた俺だけを見てくれる日は来ますか?
『…練習始まるみたいだよ。行っておいで』
「あ、うん。」
やっぱりは俺の事なんて消したい過去の男でしかねえのかな。偶然とはいえ夜久に掘り出されたことがそんなに嫌だったのか?お似合いとか言われたら俺はやっぱすげえ嬉しかったけど…まあ振られた側だし。振った側からしたら嫌なもんなのかね。
「クロ」
「ん?」
「大丈夫?」
「いや分かんねえ…たぶん朝のこと気にしてるぽいです。」
「クロとお似合いって言われたこと?」
「多分ね」
「クロ嫌われてんの?」
「いや辛辣すぎるでしょうが包んで研磨さん」
「じゃないとあそこまで暗いの訳わかんないでしょ」
「まあ…。いや、えー…俺嫌われてんのかな。」
ショックデカすぎて全然無理なんですけど。まじ?いやでもあの反応的に無くはない話だよなあ。まじかぁ…きっついな。
プレイに全然集中できねえ。
「おい黒尾調子悪くね」
「ごめん」
「お前に素直に謝られるの気持ち悪いんだけど」
「俺だってごめんねくらい言えますぅ!」
やばい元気でない…なんか目も合わせられねえ。
これ以上距離詰めて嫌われたら死ぬ…ほんとに。