第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
卒業までには告白しようなんて思ってたけどそれじゃあ全然遅せぇよな。あぁまじでどうすっかな…。
「あのさ、もう告白したら?」
「フラれたら俺はどうしたらいいんですか」
「いや知らないけどさ…うじうじしてるより良くない?まあこのまま夜久くんと付き合って帰ってくるかもだけど。」
「きゃんま!!何でそんなこと言うんだよ!?」
「声でかい。はあ…俺んちでゲームでもする?少しは気紛れるんじゃないの。」
「きゃあんまああ…!!」
「うるさいってば…」
無気力にゃんこのくせに、絡みの事だとなんだかんだいつも俺のメンタルケアしてくれんだよな。
この日は研磨の家で夕飯までご馳走になってから帰路についた。
『あれ、鉄朗?』
聞き覚えのある心地いい声に呼ばれて振り返ると愛しい彼女が立っていた。
「…、?何してんの」
『夜久くんと映画だってば』
「今帰り?おっそくね?」
『そう、かな?映画のあと夜ご飯一緒に食べたの』
時刻は21:00。遅いと言えば遅いけど別に気にするほど遅い訳じゃねえし…いやでもこんな遅くに1人で…。
「ん、まあ…いいや、送ってく」
『え?いいよ、あと少しで着くもん』
「こんな時間にお前を1人で外歩かせるわけないでしょ。」
『相変わらず過保護だなあ鉄朗は。じゃあこの道抜けるまでお願いします。』
「あいあい、この道暗いしな。」
相変わらず、ね。
付き合ってた頃、周りも引くくらい過保護だった俺とお姫様のように扱われてた。そのままあのときの気持ちも思い出してさ…そんでもっかい俺の事好きになってよ。
「やっくんとは楽しかった?」
『うん、映画もすっごい面白かった!』
「良かったね。そんでお前は何で1人なわけ?」
『夜久くんのお家真逆だよ?送ってくれようとしたんだけどさすがに申し訳なさすぎてバイバイしたよ。』
「…あー、やっくんとはどうな、った?」
『どうなったって?』
「その、だから付き合うとか、さあ…っ」
『夜久くんとはそういうんじゃないよ。持ってた映画のチケットが違ったら鉄朗が誘われてたかもしれないし。普通に映画見て,ご飯食べて、それだけ!』
そんなん言ったって…やっくんの気持ちは分かんねえじゃん。待って俺くっそメンヘラみたいじゃない?彼氏でもねえクセに…キツ。