第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
最近気がついた事がある。約束なんてせずとも方向が同じなのだから必然的に一緒に帰れるということ。
去年の夏はなんとなく気恥ずかしくてわざと時間ずらしたりしてたっけ。
1度フラれてる手前、復縁だし慎重にいかねえと…俺は一緒に帰れる時間が好きだし大切にしたい。ちょっとずつ俺の事意識してくれたらいいなーなんて思って頑張ってるけどイマイチ進展しねーの。
「休憩時間やっくんと何話してたの?」
『私の気になってた映画のチケットを夜久くんが知り合いの人から貰ったんだって。せっかくなら興味ある人が見た方がいいからって誘ってくれたんだよ。』
「ん、え?やっくんと2人で映画行くの?」
『そうそう!いや〜楽しみだなあ』
「そ、うなんだ。」
『うん!じゃあ、またあしたね!』
「あ、うん。また」
あっという間に分かれ道まで来てた。がやっくんと映画…2人で…。デートじゃねえかよ。あーくそ…あいつ女の子はショート派っつってたくせに!はロングだろうが!!そのまま付き合ったりしないよな?てかやっくんてのことどう思ってんだろ…はあ。
それからしばらくは授業中も部活中もぼーっとする時間が多かった。やっくんとの会話を聞くに映画へ行くのは明日らしい。部活はオフだし学校終わったら行くんですって。
HRが終わるなり教室を出てのクラスに向かうやっくん。でも先に終わってたのはどうやら彼女だったらしく俺たちの教室の前で待っていた。
「ごめんねお待たせ!」
『私のクラスも今さっき終わったから全然!』
「よし、行くか!」
『わーい、楽しみ!』
「じゃあな黒尾ーっ」
『てつろまたね!』
「あぁ、じゃあな。」
満面の笑みで手を振ってやっくんの隣を歩く彼女に心がモヤモヤとする。どーすっかなあ…。
「ちょっとクロその顔やめなよ」
帰り道にばったり遭遇した研磨が俺を見ながら溜息をつく。
「どんな顔よ」
「雨降りそうな顔してる」
「そんな淀んでねえわ」
「夜久くんと2人で校門出ていったけどデート?」
「分かってんなら抉ってくるなよ」
「それでそんな顔してたの?」
「俺がのこと以外でこんな顔に出るほど左右されたりしねーっつの。」