第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
がマネ業をしてくれるようになって1ヶ月が経った。1年もよく懐いてるし俺は毎日幸せだし、がいるだけでこんなにもバレーに集中できるのかと思うとほんとすげえなって。
ドリンクだって誰に教わったのかそれぞれの好みにあわせて粉の分量を変えたりしてるらしい。
「の作るドリンクがいちばん美味しい」
『ほんと?ありがとう研磨くん。
少しでもみんなの役にたててるかな…』
「もう皆がいてくんなきゃ困ると思うよ。」
聞こえてくる二人の会話に心の中で頷く。
がいない部活は正直しんどいだろうなってきっと誰もが思ってる。それくらい俺たちにとって大きな存在になり始めてる。
『てつろ?水分とってる?』
「あ、うん、ごめんさんきゅ。」
手渡されたドリンクを受け取ると微かに指先が触れた。
「…っごめ、!」
『っと、セーフ!』
「わり、ありがと。」
俺の手から滑り落ちるスクイズに咄嗟に手を伸ばした彼女。指先が触れただけでこんな動揺して、気にしてんのは俺だけで。情けないっつーか恥ずかしいっつーか…脈ねえなって結構凹む。
「ちゃーん」
『はーい!ごめん呼ばれたから行くねっ』
「あ、うん」
俺から離れてやっくんの元へと行ってしまう彼女。やっくんと話すときはあんな顔するんだなーとか、俺といる時より自然体に見えるなあとか…いらん事考えて勝手に凹んで女々しすぎるよな。
「クロ」
「なんですか研磨さん」
「のこと見すぎ」
「…だよな。分かってる…」
「好きって言ってるようなもんだよ。バレるよクロ。距離置かれて泣いたって知らないからね。」
「ん、気をつける。」
別にバレたっていいけど。今じゃない気がして、それなら隠すべきなんだよなって毎回研磨に気付かされる。卒業するまでには伝えたい…どうにか距離詰めないとな。