第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
「おい研磨さっきのなんだよ」
「さっきのってなに」
「がいたら嬉しいとかなんとかって言ってたろ!」
「あー、クロの心の声を代弁してあげたんだけど間違ってた?」
「…間違ってませんけど。けど!」
「もうなに?それならいいでしょ。
1年の昇降口向こうだから行くね。じゃあ」
相変わらず無気力な表情で突拍子もないことしてくるから油断ならんな。すたすたと自分の学年の昇降口へと歩いていく研磨の背中を見送って俺も歩き出す。
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っあー…考えすぎて頭いてえ。
おかげで授業中一睡もしてない。
はマネになんのか?
今朝の言い方的に…いやぁ分からん。
『てーつろ、考え事?』
「…っビビった!」
走り寄って来た足音が俺の後ろできゅっと止まって覗き込むようにひょこっと現れた彼女。
『ごめんね、驚かすつもりじゃなかった!前歩いてたから追いつけるかなーって。ほら、一人で行くのはやっぱ少し心細くてさ。』
「あぁ、まあそうだよな。
そしたら…あー…一緒に行くか?」
『うん!ありがと鉄朗!』
あーだめだ…くっそ可愛い…。
そんな顔で俺の事見んな…いや、俺にしか見せないでくれ。隣をちょこちょこと歩いて着いてくるジャージ姿の彼女が可愛くて仕方ない。
「荷物持ちましょーか?」
『ん?ううん、大丈夫!ありがと〜』
自分で持てるよってヘラ〜と笑って荷物を俺に見せる。
別れて1年ちょっと経つのにいつまでたっても過保護になっちまう。意識されてないことなんて誰が見たって明らかなのに。
「うーす」
『おじゃま…しまーす』
「あれ、ちゃん!
今年もマネやってくれるの!」
『夜久くん!今年も猫又監督が声掛けてくれてね、夏だけでいいって言われたんだけどもう少し力になれないかなーって』
「めっちゃ助かるよ〜ありがと!」
そういえばやっくんと仲良かったっけ。去年の夏来てくれたときいつの間にか仲良くなってたんだよなぁ。
『あ、ねえ鉄朗』
「ん?」
『一緒に来てくれてありがとね』
こそっとそれだけ言って皆の輪に入っていく。あー、ほんとこういうとこだよね。