第12章 伝えたいことは (黒尾鉄朗)
「黒尾さーん♡」
「噂をすれば…だね。
俺先行ってるから、じゃあ」
「おい研磨…っ!」
研磨と同じ学年の女子。
よく練習やら試合やら見に来る子。
「黒尾さんおはようございます♡」
「あぁ、おはよーございます」
「今日の部活も見に行っていいですかあ?」
「あ、いやぁ、うん。ご自由に…どーぞ?」
「やったあ♡ 」
…あ、だ。
反対側の道を友達と歩いている彼女に一瞬で視線を奪われる。
「ごめん俺行くね。」
「え、ちょっと黒尾さん!?」
「ー」
『あ、鉄朗おはよ〜』
「おはよ!お友達ちゃんもおはよ」
『そうだ鉄朗あのね、猫又監督から今年の夏もってお願いされたんだけど引き受けていいかな?』
「がいいなら俺たちはすげぇ助かるけど。」
『そっか、じゃあ今年もやるね!』
今年の夏も…。
俺たち音駒の男バレにはマネージャーがいない。練習試合とか合宿とか追い込み期間は正直自分たちで全部やんのが結構大変で、だから助かることには違いねえんだけど…
「ん、ありがとな」
正直そわそわして練習どころじゃねえのよ。
いや、やる気はでる。
けどそれと同じくらいそわそわする。
ましてや男だらけの空間に女1人ってのも手放しに喜べない。
『とりあえず今日から行くね』
「はーい。…えっ、今日!?」
『うん、だめだった?』
「ダメじゃない!」
『本当は夏だけじゃなくてマネ欲しいんだって猫又監督。プレイに集中させてあげたいって言ってたよ。』
「あー…そうなの」
『だから別に頼まれてないんだけど行こうかなって。』
「がいてくれるなら俺は嬉しいし来て欲しい。みんなも喜ぶよ。」
『よかった!』
そうそう、その通り…って。
え、心の声もれてた?
いや違う…
「研磨先行ったんじゃなかったのかよ!」
当たり前のようにの隣を歩く研磨に驚く。いつからいたのよ。
「俺クロのファン苦手だから…でもいないならいいやと思って戻ってきた。」
『相変わらず人気なんだね鉄朗』
「いやいや別に全然だけど」
『バレー上手いし背高いし…そりゃ人気だよね』
……?褒めてるよね?
が俺の事褒めてるってことは…チャンスありってこと?いやでもファンがいるとか本当は知られたくなかったしな…。